ひめゆりの塔

1953年作品
監督 今井正 出演 津島恵子岡田英次
(あらすじ)
昭和20年3月、米軍上陸直前の沖縄。陸軍病院で看護要員として勤務することを命じられた沖縄師範女子部の学生たちは、宮城(津島恵子)、玉井(岡田英次)等の教師に引率され、野戦病院のある南風原の丘へと向かった。上原文とチヨの姉妹は第三外科壕に配属されるが、そこでは壕に入り切れない程の大勢の負傷兵が満足な治療も受けられないまま横たえられていた….


香川京子が「おかあさん(1952年)」の翌年に出演した作品。

Wikipediaによると、いわゆる沖縄戦が始まったのは1945年3月26日。すなわち、女学生たちの徴用が行われたのは、まさにその直前だった訳であり、まあ、“総力戦”なのだから当然のこととはいえ、彼女たちの生命の安全は最初から全く考慮されていなかったことになる。

作中においても、彼女等を含む地元住民に対する軍部の高圧的、かつ、差別的な言動の数々がきちんと描かれているが、最終的に逃げ場がなくなってしまった女学生たちに対し、一方的に“解散”を申し渡すというあまりに無責任な軍部の態度には、怒りを通り越して、もう、悲しくなってしまう。

ストーリーは、第三外科に配属された女学生たちによる献身的な活動の様子と、彼女等を励まし続ける担任教師の苦悩が中心になっているが、最初から最後まで出ずっぱりというような特定の主人公は存在せず、それぞれのエピソードごとにそこで中心的な役割を果たす登場人物に焦点を合わせながら話しが進められていく。

そして、大勢の女学生の中でひと際目立っているのが上原文に扮した香川京子であり、その聡明そうなお顔立ちを一目見ただけで、この上原文という人物のキャラクター(=素直で責任感の強い優等生!)が容易に理解できてしまう。香川自身は、本作公開当時既に二十歳を超えていた訳であるが、化粧っ気なしでも十分美人な彼女にとって、この女学生役はまさに適役だったのだろう。

ということで、本作を見ただけでは良く分からなかったけど、米軍が上陸したのは現在の那覇市よりもさらに北方だったらしく、彼女たちは那覇市の東南にある南風原町のあたりから糸満市の方向へ逃げて来たんだね。ひめゆりの塔が何故あの位置に建てられているのか、ようやく理解できました。