銀座化粧

1951年作品
監督 成瀬巳喜男 出演 田中絹代、花井蘭子
(あらすじ)
銀座のバー「ベラミ」のベテラン女給である雪子(田中絹代)は、一人息子の春雄と一緒に長唄の師匠宅の二階に間借り住まい。時々、昔の情人である藤村が訪ねてくるが、戦後落ちぶれてしまった彼は来るたびに雪子に小使銭をせびるような有様であり、元女給仲間の静江(花井蘭子)が関西商人の妾として何不自由なく暮らしているのとは大違いの生活だった….


「おかあさん(1952年)」に引き続き、香川京子の出演作品を鑑賞。

雪子は、飲み逃げしようとした客から代金を取ろうとしてまた飲み逃げされてしまうという、まあ、お人好しとまでは言えないにしろ、相当に人の良い性格の持ち主。静江からは旦那を持てと再三勧められるが、根が真面目な上、なまじ学があるだけになかなかその踏ん切りもつかない。

香川京子は雪子と同じ店に働く若い女給役で、役名も“京子”。雪子は彼女のことを水商売から早く足を洗わせ、真面目な男のところに嫁がせたいと思っているのだが、そんな二人の前に、真面目で文学好きな石川という男が現れる。彼との出会いに、年甲斐もなく心がときめいてしまう雪子であったが、石川の方は京子に一目惚れ。雪子の知らない間に二人は結婚の約束をしてしまう。

まあ、これは俺の偏見なのかもしれないけれど、田中絹代には「噂の女(1954年)」の“やり手女将”みたいな役の方が良く似合うというイメージを持っており、本作のような人の良いキャラクターを演じる彼女には、正直、ちょっと違和感がある。

本作でも、京子と石川が一夜を過ごしたことを知った雪子が、京子のことを嫉妬混じりに非難するっていうシーンがあり、ここでの演技が最も田中絹代らしいと思うんだけど、残念なことに、二人が真面目に結婚のことを考えていることを知った雪子は、すぐに元の人の良いキャラに戻ってしまうんだよねえ。

ということで、ストーリーは通俗的であり、お目当ての香川京子の出番も決して多くはないが、堀雄二や田中春男といった多彩な男優陣の演技もなかなか面白く、気軽に楽しむのにはピッタリの作品。個人的な趣味から言えば、成瀬巳喜男はこの頃の作品が一番好きですね。