生き残った帝国ビザンティン

ローマ人の物語」で塩野七生から“ローマ帝国ではない”と言われてしまった東ローマ帝国ことビザンティン帝国の歴史に関する本。

330年のコンスタンティヌス大帝によるコンスタンティノープルへの遷都から、オスマントルコの侵入によって1453年に帝国が滅亡するまでの実に千年に及ぶ歴史を文庫本1冊で学ぶことができるのはとても便利。「ローマ人の物語」におけるような登場人物に対する作者の思い入れは感じられないが、まあ、これが文学と学問の違いなんだろう。

また、ところどころで披瀝される作者である井上浩一氏のキリスト教観はなかなか面白く、特に聖像崇拝を例に、キリスト教はオリエント型の絶対神ギリシャ型の人間臭い神様との妥協の産物であると指摘している点はとても興味深かった。

ということで、てっきり「ローマ人の物語」の続編を狙った企画だと思って購入した訳であるが、実際は10年以上前に新書で出版された作品を今回文庫版として復刊したものなんだそうである。作者には大変失礼したが、お陰さまでいつかイスタンブールにも行ってみたくなりました。