フェリーニのローマ

1972年作品
監督 フェデリコ・フェリーニ 出演 ピーター・ゴンザレス、ブリッタ・バーンズ
(あらすじ)
イタリアの田舎に生まれたフェリーニ(ピーター・ゴンザレス)は、成人して一人ローマへとやってくる。やがて一流の映画監督となったフェリーニは、クレーン付きの自動車に撮影用のカメラを積み込み、彼自身の回想シーンを織り交ぜながら、ローマの虚と実を撮影し始める….


ローマ人の物語」を全巻読破したことを記念して、「フェリーニのローマ」を久々に再見。

これといってハッキリしたストーリーがある訳ではなく、現代(といっても、今から30年以上も前のことになるんだけど)のローマに住む人々の生活をドキュメンタリー風に撮影した映像とフェリーニ自身の回想とが混在したような作品。

フェリーニといえば“難解”と言われていたあの時期、ただ映像をボーっと眺めていれば良いような本作を見て、正直ほっとした記憶がある。この後あたりから、「アマルコルド(1974年)」とか「オーケストラ・リハーサル(1979年)」みたいに彼の作風が変化していくんだよね。

昔見て面白かったエピソードは、何といってもカトリック教会のファッションショー。最初は結構地味だった衣装が次第にエスカレートしていき、次第に異教的な雰囲気に包まれていく様はカトリックの本質を衝いているようでとても興味深い。宮崎駿の「千と千尋の神隠し(2001年)」の最初の方で、夕暮れ時の中大勢の異形の者たちが登場するシーンを見て“フェリーニみたい”と思ったのは、この作品の影響です。

今回改めて見て面白かったのは、地下鉄工事のシーン。先日のイタリア旅行でローマという都市が多重構造になっているってことが良ーく解ったので、作中の工事関係者の苦悩も十分理解できた。まあ、実際の工事の過程で発見された遺跡も相当多かったことと思うが、そういうのって今どうなっているんだろう。地下鉄の窓から見られたら面白いのにね。

ということで、今回、実際に自分の目でローマを見てきたせいか、前に見たときよりもさらに自然にこの作品を受け入れられたような気がする。ラストで暴走族の乗るオートバイのヘッドライトの中に数々の遺跡(サンタンジェロ城、ナヴォーナ広場、スペイン広場、コロッセオ等々)が浮かび上がるシーンは、永遠(=死)と刹那(=生)とが入り混じった都ローマを象徴する名シーンだと思う。