ローマ人の物語 ローマ世界の終焉

遂にローマ人の物語の最終巻。テオドシウス大帝の死後、東西ローマ帝国に分裂するあたりから話が始まる。

すでに前巻から皇帝はローマ帝国の中心の位置から外されており、今回、最初に登場するのは蛮族の父を持つ「最後のローマ人」スティリコ。わずか1、2万人程度しか集まらない軍隊を率い、かつての皇帝に代わってローマ帝国の死守に奔走するものの、最後は味方の裏切りにあってあえなく憤死する。

そして誰も守ってくれる者がいなくなってしまった西ローマ帝国は、410年のローマ劫掠を経て、遂に476年に崩壊。その崩壊の理由が“誰も次の皇帝に立つ者がいなかったから”というのが何とも寂しい。この後も東ローマ帝国は存続するものの、作者はこれを“ローマ帝国”とは認めていないため、ここでジ・エンド。

ということで、最後まで文章にはしていないものの、ローマ人の美徳である“寛容”の精神を繰り返し記述するとき、作者が現在の中東情勢を念頭に置いているのはまず間違いのないところ。まあ、ちょっと考えてみれば、先の大戦で敗れたときに我が国も連合国側の“寛容”のおかげで奇跡的といわれる戦後復興をなしえた訳であり、その国の一員として“寛容”の重要さを忘れてはいけないんだろうと思いました。