戦火のかなた

1946年作品
監督 ロベルト・ロッセリーニ 出演 カルメラ・サツィオ、ロバート・ヴァン・ルーン
(あらすじ)
1943年7月、シチリアに上陸した連合軍は、海岸近くの小さな村に斥候隊を差し向けるが、退却したドイツ軍が設置した地雷原を避けるため、彼等は村娘のカルメラカルメラ・サツィオ)に道案内を依頼する。途中の城塞で彼女と一緒に待機することになった米兵のジョー(ロバート・ヴァン・ルーン)は、英語が話せない彼女に写真を見せようとライターの火を点けるが、それが標的となり彼はドイツ軍狙撃兵の銃弾に倒れる….


無防備都市(1945年)」に続くロッセリーニの戦争三部作の第二弾。

シチリアに上陸した連合軍が、敗走するドイツ軍を追ってイタリア半島を北上していく様子を6つのエピソードで時系列的に描いたオムニバス作品であり、シチリアナポリ、ローマ、フィレンツェロマーニャ地方(フランシスコ派僧院)、ポオ河畔の沼沢地帯の6個所が作品の舞台となっている。

戦争映画とは言っても、中心的に描かれているのは連合軍とドイツ軍の間で翻弄されるイタリア市民の姿であり、第二話、第三話及び第五話では戦闘シーンすら登場しない。また、予算の関係上、市内でのロケがほとんどであり、多くの出演者が素人ということもあって、「無防備都市(1945年)」に比べるとドキュメンタリー的な色彩が濃く、特に第六話は俺の抱いているイタリアン・ネオレアリスモに対するイメージに一番近い。

しかし、一方では、緊迫感の溢れる第四話と第六話の間に、カトリックプロテスタントユダヤ教という異なった信仰を持つ三人の連合軍従軍牧師が、ガチガチのカトリックであるフランシスコ派僧院を訪れるという心和ませるエピソード(第五話)を挿入するといった配慮もなされており、ロッセリーニという人は意外に物語性を重視する監督だったという気もする。

ということで、個人的には第四話で一昨年訪れたフィレンツェ市内の当時の様子が見られたのが嬉しかった。主人公たちが市内に潜入するときに利用する「ヴァザーリの回廊」は、ピッティ宮殿からポンテ・ヴェッキオの上を通り、ウフィッツィ美術館へと続いているもので、同美術館の北側の窓から全体を一望することが出来ます。