僕の村は戦場だった

1962年
監督 アンドレイ・タルコフスキー 出演 コーリャ・ブルリャーエフ、ワレンティン・ズブコフ 
(あらすじ)
第二次世界大戦中の独ソ戦の最前線。ガリツェフ上級中尉の部隊に保護された少年イワン(コーリャ・ブルリャーエフ)は、中尉からの質問には答えようとせず、何を訊かれても“司令部に電話して”の一点張り。どうやら彼は、司令部のグリズヤノフ中佐の指示を受けて敵情を探っていたようであり、ソ連軍は彼の勇気ある行動によってドイツ軍に関する貴重な情報を入手することが出来たのだが…


アンドレイ・タルコフスキー監督の長編一作目となる戦争映画。

どうやらコロナ対策に伴う自宅待機生活にも幾分慣れてきたようであり、当初考えていたより感染者数の増加スピードが緩やかなこと(=まあ、これに関しては我が国におけるPCR検査体制の貧弱さも少なからず影響しているのだろうが…)もあって、難解なことで知られるタルコフスキー作品に挑戦するだけの心の余裕も出てきたみたい。

しかし、同じタルコフスキー作品といっても、後の「惑星ソラリス(1972年)」なんかに比べると全然ストーリーは分かり易く、途中、睡魔に襲われるような心配も無用。テーマになっているのは主人公であるイワン少年の“怒り”であり、冒頭の回想シーン(=モノクロ映画ならではの美しさ!)で見せてくれる天使のような笑顔との落差にまず驚かされる。

説明的な描写やセリフが少ないために詳細は不明だが、どうやら彼の家族は侵攻してきたドイツ軍によって殺害されてしまったようであり、その復讐のためソ連軍に協力しているらしい。しかしながら、まだ12歳の子供ということで、任務終了後、グリズヤノフ中佐から前線を離れて幼年学校に通うよう指示されてしまうのだが、イワンはこの申し出を頑なに拒絶する。

まあ、中佐等の言い分は「戦争は大人がやるもんだ」ということなのだが、イワンにしてみれば彼の家族を戦争に巻き込んだのはそんな大人たちの方であり、勝手に巻き込んでおいて今さら「学校に行け」はないだろうというのが彼の本音。結局、彼には新たな斥候の任務が与えられるのだが、どうやらその結果は悲劇的なものになってしまったらしい。

ということで、本作にはマーシャという若くて美人の軍医も登場するのだが、唯一、彼女の役割が何だったのかが良く分からない。イワン同様、「戦争は男がやるもんだ」と言われているようでもあるが、それに対する彼女の反応は曖昧なままであり、う~ん、やっぱりタルコフスキー作品は一筋縄ではいきません。