戦争のはらわた

1975年作品
監督 サム・ペキンパー 出演 ジェームズ・コバーン、マクシミリアン・シェル
(あらすじ)
第二次世界大戦末期のロシア戦線。ブラント大佐率いるドイツ軍連隊は、ソビエト軍の連日に及ぶ猛攻の前に防戦一方の状況であったが、小隊長のシュタイナー軍曹(ジェームズ・コバーン)の活躍もあって何とか持ちこたえていた。そんなところにプロイセン貴族出身のシュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル)が志願によりフランスから着任してくる….


サム・ペキンパー監督によるイギリス・西ドイツ合作の戦争映画。

軍服姿のジェームズ・コバーン率いる小隊が敵軍の陣地を襲撃するシーンから始まるのだが、彼等の喋るセリフは全部英語だし、軍服からだけでは敵味方ともどこの軍隊なんだかよく分からないということで、状況設定を把握するのに大変苦労させられる。実際、最初の数分間は、ドイツ軍に化けた米軍の特殊工作部隊の話なんだろうと思って見ていたくらい。

まあ、しばらく見ていれば、ジェームズ・コバーン扮するシュタイナー軍曹もジェームズ・メイソン扮するブラント大佐も、ともに正真正銘のドイツ軍人であることが理解できるのだが、一口に“ドイツ軍”といっても、その内部には「ナチスv.s.非ナチス」、「貴族出身v.s.平民出身」、「士官v.s.下士官」といった複数の対立軸を抱えており、そのへんの確執みたいなものが本作の大きなテーマの一つになっている。

ナチスは最初から論外ということで、主要な登場人物は、平民出身の下士官であるシュタイナー軍曹、平民出身の士官であるブラント大佐、そして貴族出身の士官であるシュトランスキー大尉というように3区分されるのだが、そこはお約束どおり、シュタイナー軍曹が善玉でシュトランスキー大尉は悪玉という設定の下、ストーリーは様々な興味深いエピソードを交えながら進んでいく。

そして、シュトランスキー大尉の卑劣な行為により、多くの部下を失ったシュタイナー曹長(=途中で昇進している。)がその恨みを晴らして一巻の終りかと思われたそのとき、何と、この二人に加えて冷静だった筈のブラント大佐までもが“大きな男の子”に戻って“戦争ごっこ”に突入していくというラストは、まあ、いかにもペキンパー監督らしい。

ということで、ストーリーだけでなく、お得意のアクションシーンの方も見所満載であり、特にソビエト軍の戦車部隊が登場するシーンの迫力は凄まじいばかり。あまりの怖さに最初のところで見るのを止めてしまった「プライベート・ライアン(1998年)」を別にすれば、俺が今までに見てきた戦争映画の中では一番リアルな印象を受けました。