栄光何するものぞ

1952年作品
監督 ジョン・フォード 出演 ジェームズ・キャグニー、ダン・デイリー
(あらすじ)
1918年のフランス戦線。前線から戻って来たフラッグ大尉(ジェームズ・キャグニー)率いるアメリ海兵隊L中隊に、新兵の訓育係としてクワート軍曹(ダン・デイリー)が赴任してくる。フラッグ大尉は彼の能力を高く評価しているものの、その酒と女癖の悪さにはほとほと閉口しているところであり、案の定、大尉が休暇でパリへ出かけている隙に、クワートは大尉が懇ろにしていた居酒屋の看板娘シャルメインと恋仲になってしまう….


ジョン・フォードが、「静かなる男(1952年)」と同じ時期に公開したミュージカル・コメディ作品。

フラッグ大尉とクワート軍曹とは、いわゆる“腐れ縁”という関係であり、これまでも赴任した先々で“女性”を巡って争ってきた間柄。まあ、そうはいっても、根っからの軍人であるこの二人にとって、恋愛は所詮遊びにしか過ぎなかった訳であるが、ドイツ軍との激戦を経験し、戦闘に明け暮れる生活に嫌気が差した彼等は、シャルメインとの結婚を真剣に考えるようになる、っていうのが題名の由来。

一応、ミュージカルっていうことになっており、事実、シャルメインと、もう一人別の女性が唄うシーンも含まれているが、さすがの名匠もミュージカル映画は勝手が違ったようであり、折角、ジェームズ・キャグニーとダン・デイリーというヴォードヴィル出身の二人を主役に起用したにもかかわらず、彼等が歌って踊るシーンは全く出てこない。

肝心のドラマ部分の方も、出だしの方ではコメディ色が強かったものの、物語の進展とともに次第にシリアスな雰囲気が漂ってきてしまい、笑うに笑えないという何とも中途半端な出来。これまた折角の起用であったウィリアム・デマレストのキャラクターもほとんど活かされていない。

また、男の友情というのが本作のメインテーマであったにしろ、ヒロインであるシャルメインの意思、存在が全く尊重されていない脚本は見ていて不愉快であり、本作をフランスの方々(特に女性)がご覧になったら、相当にイヤな思いをなさるんじゃないだろうか。

ということで、正直、俺がこれまでに見てきたフォード作品の中では最低ランクに位置づけられてしまいそうな作品。いや、ジェームズ・キャグニーはいつもどおり頑張っているし、ミュージカル俳優だとばかり思っていたダン・デイリーが人情味のある鬼軍曹役をクールにこなしていたのにはちょっと感心したが、流石にここまで脚本が酷いと好意的な評価は難しいです。