ボヴァリー夫人

1949年作品
監督 ヴィンセント・ミネリ 出演 ジェニファー・ジョーンズヴァン・ヘフリン
(あらすじ)
フランスの片田舎の町医者であるシャルル・ボヴァリー(ヴァン・ヘフリン)は、往診に出掛けたある農家でその家の娘エマ(ジェニファー・ジョーンズ)を一目見るなり、彼女の美しさに心を奪われてしまう。二人はめでたく結婚するが、詩や小説などで読んだロマンチックな恋愛に憧れる彼女は、夫との平凡な結婚生活に次第に物足りなさを感じるようになり、そんなとき、彼等のもとに舞踏会への招待状が届く….


ギュスターヴ・フローベールが1856年に発表した小説の映画化。

ある貴族の邸宅で行われた舞踏会でエマが出会うのが、ルイ・ジュールダン扮する若き富豪のロドルフであり、まあ、ヴァン・ヘフリンとルイ・ジュールダンとでは勝負の行方は最初から決まっているようなものということで、後日、ロドルフと再会した彼女は破滅への道の第一歩を踏み出すことになる。

最初と最後に、ギュスターヴ・フローベールジェイムズ・メイスン)自身が登場し、原作となった小説の反社会性に関して彼が裁判にかけられるシーンが描かれているのだが、本作は、そんな危険な(?)古典的名作を上手い具合に換骨奪胎し、ハリウッド流の見事なメロドラマに仕立て上げている。

allcinemaのデータを見ても、本作はヴィンセント・ミネリがミュージカル以外の映画の監督を務めた最初の頃の作品らしいのだが、その演出は堂々としたものであり、同時期の名監督たちと比べても決して引けをとらない。それに加え、エマが初めてロドルフと出会う舞踏会におけるダンスシーンの描写は流石に手馴れたものであり、少女の頃からの夢が叶った彼女の喜びが画面いっぱいに溢れる名シーンになっている。

主演のジェニファー・ジョーンズは、公開当時ちょうど30歳ということで、作中でもエマがロドルフから容色の衰えを指摘されるシーンが出てくる。彼女自身、そろそろ“演技派”への脱皮を考えていたのかもしれないが、本作の冒頭、シャルルを出迎えるために真っ白なドレスに身を包んで登場する彼女のお姿はまだ十分に若々しく、「ジェニイの肖像(1947年)」に引き続き、個人的にはこの頃の彼女が一番綺麗だったように思われる。

ということで、例によって原作となるフローベールの小説は未読なのだが、シャルルやエマの少年少女時代なんかも描かれているらしく、ちょっと面白そう。機会を見つけて、是非読んでみようと思います。