ナイト・オン・ザ・プラネット

1991年作品
監督 ジム・ジャームッシュ 出演 ウィノナ・ライダージーナ・ローランズ
(あらすじ)
午後7時7分のロサンゼルス。女性タクシー運転手のコーキー(ウィノナ・ライダー)が空港で乗せた客は、裕福そうな中年女性のヴィクトリア(ジーナ・ローランズ)。彼女は映画のキャスティング・ディレクターであり、新作映画に出演させる新人女優を発掘する旅から帰ったばかりだったのだが、コーキーのユニークなキャラクターに興味を抱き、映画に出る気はないか誘ってみる….


ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、ローマ、ヘルシンキの5都市を舞台にしたオムニバス映画。

一つのストーリーが終了すると、時計の針は再びスタート時点まで戻るようになっており、地球上で“同時”に起きているエピソードを順番に紹介していくという仕組みになっているのだが、各都市の間には時差が存在するため、ロサンゼルスより10時間遅れの午前5時7分にスタートするヘルシンキでは、ストーリーが終了する頃には夜が明けているという趣向がなかなか気が利いている。

どのストーリーも夜間のタクシーの車内が主な舞台になっているのだが、それぞれの物語の間にこれといった関連性は見られず、まあ、良質な短編小説集を読んでいるような感じ。内容的にもとてもとっつき易いストーリーばかりであり、ジム・ジャームッシュ作品を見るのがこれで2作目という俺が言うのもなんなのだが、ちょっと意外なくらい無難でまともな作品だった。

好みから言えば、公開当時20歳の初々しいウィノナ・ライダーが見られるロサンゼルス編が一番であり、自動車の整備工になるという夢があるからと言って、何の躊躇いも無くヴィクトリアのスカウト話を断るというストーリーもなかなか痛快。断られた後の、憑き物が取れたようなヴィクトリアの表情もとても良かった。

ということで、まあ、適当な比較とはいえないかもしれないが、デヴィッド・リンチが「ストレイト・ストーリー(1999年)」を発表したのが53歳のときだったことを考えると、38歳のジム・ジャームッシュがこの作品を撮ったのはちょっと早すぎるような気がしないでもない。とりあえず、「ストレンジャー・ザン・パラダイス1984年)」等の初期作品は拝見させていただく予定だが、その後の作品については、今後の検討ということになりそうです。