アイ・アム・レジェンド

昨年末に映画で見たこの作品について、ネットに“原作の方が面白い”みたいな書き込みがあったので、試しにちょっと読んでみた。

元SFファンの俺にとって、リチャード・マシスンというとどうしてもホラー系の作家という印象が強く、これまであまり食指が動かなかった訳であるが、この“SFというよりホラー”という印象はこの本を読み終わった後でもやはり変わらなかった。確かに“吸血鬼病”に関する科学的(?)考察に相当のスペースが割かれてはいるんだけれど、ちょっと独創性に欠けるため、この点に“センス・オブ・ワンダー”を感じられないんだよね。

しかし、だからといって作品としてつまらない訳では決してなく、“ヴァンパイア・ハンターとなった筈の主人公のほうが、いつのまにか伝説の怪物になってしまう”という自虐的(?)な結末はなかなか皮肉が効いていて面白く、“うん、これならまさしく「アイ・アム・レジェンド」だな”と納得しました。

まあ、俺も単純にストーリーとしての比較であれば原作の方がはるかに面白いと思うけど、脚本家の立場からすれば原作の後半の展開はちょっと映画化しにくかったのかもしれないね。それと原作に忠実に映画化していたら、おそらくあの無人のニューヨークのイメージは相当矮小化されていただろうし、それはそれでちょっと残念かなあ。

ということで、文庫本の解説でこの本がジョージ・A・ロメロの「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(1968年)」に影響を与えたってことが書いてあったけど、確かにこの本の雰囲気としてはそっちのほうにより近い感じがしました。