複製された男

2013年作品
監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ 出演 ジェイク・ギレンホールメラニー・ロラン
(あらすじ)
大学で歴史の講師をしているアダム(ジェイク・ギレンホール)は、同僚からの薦めで見た映画のDVDに自分と瓜二つの俳優が端役として出演しているのを発見。あまりにも似すぎていることから言いようのない不安に襲われたアダムは自ら調査を開始し、その俳優がアンソニーという名前であることを突き止め、ついに対面を果たすが、似ているのは顔や髪型だけでなく、古傷の位置まで同じだった….


一部で、その“難解さ”が話題に上がっていた作品。

自分と全く同じ人間がもう一人存在するという謎の他に、大小様々な大きさの蜘蛛及びそれを連想させるモチーフ(=蜘蛛の腹部を思わせるねじれたツインタワーや蜘蛛の巣のように張り巡らされた市電のケーブル等)がしばしば映像に登場することから、“蜘蛛=女性にとってみれば、男性は彼女らに精子を提供するだけの皆同じ存在”という意味の寓話なのかなあ、と思って見終えたのだが、これがとんだ見当違い。

本作の公式ホームページにはドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による解説が掲載されており、それによると本作は“浮気をしている既婚男性の話で、彼が浮気相手から妊娠している妻のもとへ戻るまでを潜在意識の視点から描いた作品”らしい。まあ、本人が言うのだからそれが“正解”なんだろうが、彼の意図するところが矛盾無く映像化出来ていたかというと、正直、相当に疑問が残る。

いっそのことコメディ仕立てにしてしまい、アンソニーには悪魔の角と尻尾でも付けてくれればもっと分かりやすくなったと思うのだが、いずれにしても作品で上手く表現できなかった点について、監督自身がインタビューの中でフォローするという行為自体、あまり褒められたこととは言えないような気がする。

しかし、本作の最大の欠点はそんな些細なことではなく、ホラーとしてもサスペンスとしても中途半端なところ。ストーリーにどんな矛盾があっても、「マルホランド・ドライブ(2001年)」くらいの濃密な不条理感を醸し出してくれていれば何の不満もないのになあ。

ということで、「アンダー・ザ・スキン 種の捕食(2013年作品)」に引き続き、監督さんの自己満足みたいな作品を見てしまったのだが、こういう素人っぽさが抜けていない作品はちょっと苦手。ちなみに、やはり読む気にはなれない原作の小説には、蜘蛛は出てこないそうです。