ゆれる

2006年作品
監督 西川美和 出演 オダギリジョー香川照之
(あらすじ)
東京で写真家として活躍する早川猛(オダギリジョー)は、母親の法事のために久々に帰省し、家業のガソリンスタンドを継いだ兄の稔(香川照之)とそこで働いている昔の恋人の智恵子と再会する。猛と智恵子が一夜を過ごした翌日、3人は近くの渓谷までドライブに出かけるが、そこで智恵子が吊り橋から渓流に落下するという事故が発生する….


去年、映画館で見た「蟲師」がつまらなかったので、リベンジの意味も込めて2006年度キネマ旬報の日本映画部門で第2位に輝く本作を、オダギリジョーのファンである妻と一緒に鑑賞。

事故の瞬間の映像は当初観客にも伏せられており、智恵子が吊り橋から落ちたのが本当に事故なのか、それとも一緒にいた稔の犯行なのか判らないまま後半の裁判劇へと進んでいく。唯一の目撃者である猛も、その事故の瞬間を見ていたのかどうかは不明であり、そこらへんが裁判でどのように明らかにされていくのかと思っていたら・・・

まあ、単なる法廷ミステリイだとは思っていなかったけど、あの弁論コンクールみたいな法廷シーンはちょっとひどいね。兄弟間のアンヴィヴァレンツな感情というのがこの作品のテーマなんだとしても、裁判自体は事故か犯罪かという客観的な問題を審議する場であるはず。それなのに“証拠”は二の次で、兄弟間の“感情”のレベルで結論が出されてしまったような印象が強く、なんかスッキリしない。

しかも、稔の有罪が確定して7年余の時が経った後、猛が母親の残した8ミリフィルムを見た後に挿入されるあの回想シーン、あれは一体何なんだろう? 好意的に解釈すれば、人間の記憶もそのときの感情によって左右されるってことなんだろうけど、そうだとしてもそんな曖昧な記憶でもって兄を監獄に追いやってしまった彼の行為には相当問題があると思うし、そんな男が急に素直になってお兄ちゃんに会いに行ってしまうっていうラストも腑に落ちない。

ということで、脚本も兼ねている西川監督の描きたかったものも解らないではないんだけど、やはり“意あって力足らず”の印象は否めない。デヴィット・リンチ並みの演出力でもあれば、それなりに面白い作品に仕立て上げられたかもしれないが、これが長編2作目という彼女ではただ後味が悪い作品になってしまっただけ。まあ、キネ旬2位とはいえ、そのときの1位が「フラガール」だから、所詮こんなもんなのかもね。