加藤周一著作集9「中国・アメリカ往還」

たま〜に読んでいる加藤周一著作集の9巻目。今回は、中国とアメリカに関する文章を集めたもので、レベルも一般向けであるため割と短時間で簡単に読めてしまった。

まあ、俺が彼の本を読むのは主としてその美しい文章に魅かれるというか、端的に言って読んでいて気持ちが良いからであり、したがってその内容が3、40年遅れのものであっても全く問題ない。

しかし、1966年に発表されたという冒頭の「現代中国をめぐる素朴な疑問」を読んでみても、幸か不幸か(=誰の?)これが今でも結構勉強になる。ここでは、中国が“膨張主義的(又は侵略的)であると考えるべき根拠があるか”という点に関する彼の考察が述べられているんだけど、例のチベット紛争に関するここでの評価なんかは今でもそのまま通用するだろう。

それと、別の文章において「文化大革命」とその後の「4つの近代化」を比較しながら検討する中で、前者が目指した平等主義は後者が手段として採用した能率の向上と相反するものであると書いてあるのにはちょっとビックリ。まあ、考えてみれば当たり前のことなんだけど、恥ずかしながら俺は効率化を平等と関連付けて考えたことはこれまでに一度も無かったと思う。

ということで、才能のある人の文章は何年経っていてもやっぱり刺激的。安心して、引き続きゆっくりと楽しませていただくことにしよう。