教授と美女

1941年作品
監督 ハワード・ホークス 出演 ゲイリー・クーパーバーバラ・スタンウィック
(あらすじ)
古びたお屋敷で同僚の学者たちと百科事典の編纂に明け暮れていた言語学者のポッツ(ゲイリー・クーパー)。最新のスラングを収集するために久しぶりに街へと出掛けるが、そこでキャバレーの美人歌手オシーラ(バーバラ・スタンウィック)と出会い、彼女の話すスラングに興味を持ったポッツは彼女をお屋敷に招待する。はじめは乗り気でなかったオシーラであるが、彼女の情夫が引き起こした殺人事件の証人として検察が自分を探していることを知り、検察の目から逃れるため、急遽ポッツの招待を受けることに….


昔から見たかった一本。何しろ、監督が全盛期のハワード・ホークスで、脚本がチャールズ・ブラケットビリー・ワイルダーの名コンビ。これでつまらない作品になる筈はありません。

そんな訳で、オシーラは、深夜、色っぽいステージ衣装のままでポッツの生活するお屋敷に転がり込むことになる。最初は当惑していた老学者たちであるが、彼女にとって、ほとんど女性経験のない真面目一方の彼等を手玉に取るのはお手の物。超堅物のポッツに対しても、あの有名なヤムヤム攻撃で見事攻略。このへんは悪女役では定評あるバーバラ・スタンウィックの独壇場です。

これに対し、ゲイリー・クーパー扮するポッツのほうは純真そのもの。オシーラの魅力にコロっと参ってしまう訳だが、この純真さが彼女の心を動かし、いつしかポッツのことを本当に愛するようになる・・・って文章で書くと単純なストーリーのようだが、そこはホークス率いる黄金トリオ、シャープな演出とウィットに富んだセリフの数々で一時も飽きさせません。

主演のお二人はいつもながらの素晴らしい出来であるが、この二人を温かく見守る7人の老学者たちがとてもいい。見ていて「白雪姫」に出てくる七人の小人のイメージが浮かんできたんだが、それはワイルダー自身が意図的に仕組んだものらしい。彼等の一人に扮していたS・Z・サカールは「カサブランカ(1942年)」にも出ていた人だね。

ということで、本邦未公開のためか、邦題に何の工夫の跡も見られないのがほとんど唯一の欠点であり、内容的には同じホークス監督の「ヒズ・ガール・フライデー(1940年)」に比肩しうる傑作コメディでした。これのミュージカル版である「ヒット・パレード (1948年)」は、昔、TVでズタズタにカットされたものを見たことがあるが、そっちのほうももう一度見直してみたいところです。>ジュネス企画