ユナイテッド93

2006年作品
監督 ポール・グリーングラス 出演 シェエン・ジャクソン、ジョン・ロスマン
(あらすじ)
2001年9月11日。乗客40人を乗せたユナイテッド航空93便がアラブ人の青年4人の手によってハイジャックされてしまう。状況が分からずに最初はうろたえるだけだった乗客たちは、携帯電話等の情報から自分たちの乗った飛行機が自爆テロに利用されるらしいことを知り、飛行機の操縦席を取り戻すべく立ち上がった….


9.11でハイジャックされた4機の旅客機のうち、唯一、乗客の抵抗によって自爆テロに使われることを阻止したとされる“実話”をベースに作られた作品。

とはいっても、実際の飛行機に乗っていた人間は全員死亡しているため、携帯電話の通話記録等に残っているもの以外、ほとんどは後の人の想像によるものなんだが、有名俳優を使わず、ドラマチックな演出も排除してドキュメンタリー風に撮ってあるので、とってもリアルで異様な説得力がある。

まあ、実際はもっと阿鼻叫喚チックな場面も多かったんだろうと想像されるところではあるが、遺族の方々への配慮もあって映画に描かれている乗客の皆さんの行動はなかなか立派。同じ飛行機に乗り合わせただけにすぎない人たちが、限られた情報を共有し、遂にはハイジャック犯に抵抗するために一致協力して立ち上がるところなんかは、結構感動的です。

しかし、それにもかかわらず、ラストで飛行機は地表に激突し、犯人も乗客も全員死亡して一巻の終わり。そりゃあ、結果的にはホワイトハウスかどっかに突っ込むことを未然に防いだのかもしれないけど、彼らはあくまで自分たちが助かるために行動した訳であり、その意味では全くの徒労。いやあ、見終わった後の無力感というか喪失感というのは、ちょっとしたトラウマになるね。内容は全然違うけど、昔見た「未知への飛行/フェイル・セイフ(1964年)」のラストをちょっと思い出した。

公開当時、“まだ映画化するのは早すぎる”という批判もあったけど、この無力感が風化されないうちに、それをそのまま映画化したことは評価されていいと思う。おそらく数十年後にリメイクされるときは、どっかの国の特攻隊映画みたいに英雄たちによる自己犠牲のドラマにされてしまうかもしれないからね。