1949年作品
監督 キング・ヴィダー 出演 ゲイリー・クーパー、パトリシア・ニール
(あらすじ)
天才的な建築家ハワード・ローク(ゲイリー・クーパー)は、その設計があまりに先進的すぎるため大衆の支持を受けられず、彼の才能を認める批評家のドミニク(パトリシア・ニール)とも愛し合いながら別れるはめになる。ある日、彼は昔の同僚から大規模な集合住宅の設計の代役を依頼され、「絶対に設計を変更しない」という条件でその仕事を引き受ける….
別に、「ハリケーン(1937年)」からのレイモンド・マッセイつながりという訳ではなくて、昔、この作品のあらすじをある本で読んだことがあり、その頃から一度見てみたいと思っていた。
で、今回、ようやく見ることが出来た訳で、想像どおりストーリー自体はとても面白いと思うんだが、演出がちょっとマジメすぎだね。特に、ヒロインのドミニクを感情の起伏が激しい複雑な性格のキャラにしてしまったため、これが全然カワイくない。他に目立った女優は出演しておらず、ほとんど紅一点という存在なんだから、もうちょっと何とかして欲しかった。
一方、クーパー扮する“信念の人”ロークもほとんど冗談も言わないような真面目キャラ。いささか強引な筋立てでドミニクと出会い、お互い一目惚れするんだが、こんな二人の性格が災いしてか、その後のラブロマンスも見ていてもやはり全然楽しくない。せめてハッピーエンドであるラストシーンくらい、ロークに笑わせればいいのになあ。
脚本の方もイマイチかなあ。自分が設計した集合住宅に無様な変更が加えられていることを知ったロークは、なんと建築中のその建物をダイナマイトで爆破してしまい、裁判にかけられる。ここからがこの作品の最大の見せ場だと思うんだが、ここに辿り着くまでが長すぎるため、肝心の裁判の描き方が中途半端。何といっても、圧倒的に不利な世論をたかだか数分間のロークの演説だけでひっくり返してしまうというストーリー展開は、相当説得力に欠けると思うよ。
ということで、できればキャプラあたりに監督&脚本を任せてもらえば、傑作になり得たかもしれない作品だと思う。ちょっと、ユーモアなんかも交えてね。で、その際は、ローク役はクーパーでもいいから、ドミニク役は是非ともジーン・アーサーでお願いしたいものです。