逃亡日記

失踪日記」で華麗なるカムバック(?)を果たした吾妻ひでおの最新刊。

俺が吾妻ひでおを集中的に読んでいたのは、今から30年くらい前のこと。当時、「奇想天外」っていうSF雑誌があって、まともなSFファンは「SFマガジン」を読むんだろうが、どういう訳か俺には「奇想天外」のほうが肌に合い、毎月こっちのほうを読んでいた。

その頃、吾妻はこの雑誌にちょくちょく作品を掲載しており、特にこの「逃亡日記」の中でも紹介されている「闇のクロスカウンター」を読んだときに感じた圧倒的なまでの馬鹿馬鹿しさは、今でもはっきり憶えている。(まあ、名作と言われるル・グウィンの「闇の左手」を、俺が十分理解できなかったことに対する鬱憤晴らし的な側面も多分にあったかもしれないが。)

で、その後も彼の新刊本はできるだけ購入するようにしていたのだが、そのうち刊行数が次第に減少していき、いつの頃からか全く名前を見ないようになった。でも、こういうことはギャグマンガの世界では良くあることなので、“きっとそれなりに優雅な印税生活でも送っているのだろう”と彼の消息を気にもかけなくなったときに出たのが「失踪日記」だった。内容は結構衝撃的だったけど、作風が昔と変わっていないのが嬉しかった。

さて、本書は、腰巻きに「日記三部作完結編!?」と書いてあるとおり、「うつうつひでお日記」に続く「失踪日記」の便乗本で、内容は彼のインタビュー記事をまとめたもの。ぜんぜん“日記”じゃないし、マンガも最初と最後にちょっとあるだけで、これで1,200円(税抜き)というのはちょっと高いと思うけど、昔お世話になった作者のためなら仕方ない。

インタビューの内容は、作者らしさが出ていてそれなりにおもしろかった。特に、初期の代表作「ふたりと5人」が彼の趣味じゃなかったってことが判ったのは収穫。正直、少年チャンピオンを読んでた頃、俺は彼の作品はあまり好みじゃなかったんだよね。