となり町戦争

三崎亜記の第17回小説すばる新人賞受賞作。
最近映画化されたらしく、TVで紹介されていたストーリーがちょっと面白そうだったので購入したのだが、なーんだ、コメディじゃなかったのね。それと、亜記ちゃんは男の人でした。

安部公房の不条理劇か、筒井康隆のドタバタ物あたりを連想しながら読み始めたのだが、結局、物語は大きな盛り上がりも見せぬまま淡々と終了。うーん、“見えない戦争”って一体何だ?

最初は、薬害エイズとか交通行政なんかの暗喩かとも思ったんだが、どうもこの解釈はありきたりすぎるし、むしろ、現在、中東等で行われている実際の戦争のことなのかとも思ったが、こっちは遠方のことにもかかわらず、戦場の様子がちゃんとTVでも見られるしなあ。

だいたい、状況がわからないまま戦争に協力するという主人公の行動パターンが理解できないため、やむなく“戦争がルーティーン・ワーク化された未来の話で、主人公は現代からタイムスリップした記憶喪失男”ということにして読み進んだのだが、これでも香西嬢の弟が戦死することの意味は理解不能

まあ、ミステリじゃないんだから、別に「正解」はいらないのだろうが、なんか消化不良気味で釈然としないなあ。しかも、文庫本には「別章」ってのが掲載されていて、これを読んでみると最初の解釈に近いような気もするんだが、何かこういうのって言い訳めいていて好きになれない。それに、この手の作品は大作家が手遊びに書いたのなら許せるけど、新人の分際で・・・っていうのは、年寄りのヒガミかねえ。

それにしても、角川はよくこの作品を映画化する気になったもんだと思う。いったいどの場面を映像化したいって考えたんだろう? 映画館に見に行く気は毛頭無いけど、ちょっと気になる。(って、しっかり乗せられてる。)