女相続人

1949年作品
監督 ウィリアム・ワイラー 出演 オリヴィア・デ・ハヴィランドモンゴメリー・クリフト
(あらすじ)
裕福な町医者の一人娘キャサリンオリヴィア・デ・ハヴィランド)は、今は亡き才色兼備の母親とは異なり、生来地味で内気な性格。ところが、あるパーティで知り合ったモーリス・タウンゼンド(モンゴメリー・クリフト)はそんな彼女に興味を持ち、二人は急速に愛し合うようになる。しかし、キャサリンの父親は定職を持たないモーリスを娘の財産狙いと決めつけ、二人の結婚に反対。ついにキャサリンは駆け落ちを決意するのだが….


ワイラーの代表作の一つ。

主演のオリヴィア・デ・ハヴィランドは、ご存じ「風と共に去りぬ(1939年)」のメラニー役で有名。俺もはじめて「風〜」を見たときはスカーレットの美しさに目が眩み、メラニーのことはほとんど眼中になかったのだが、何度か見返すうちにスカーレットとレット・バトラーの恋物語より、スカーレットとメラニーの女の争いのほうに興味が湧いてきて、次第に彼女に注目するようになった。

そんな彼女が「風〜」の10年後に主演したのがこの作品。前半のおどおどしたオールドミスが、諦めかけていた恋愛と人生への深い絶望を経験し、人間不信の行かず後家へと変わっていく姿を見事に演じ、アカデミー主演女優賞に輝いた。しかも、そういった内面の変化とは反対に、彼女自身はだんだん綺麗になっていくというのは何とも皮肉な演出である。

それにしても、同じ娘を持つ親の気持ちとして、キャサリンの父親に対する仕打ちは怖いなあ。まあ、彼女だってバカじゃないからモーリスの興味が主に自分の財産にあることくらいは薄々気付いていた訳で、それよりも信頼していた父親の「お前には刺繍しか取り柄がない」という言葉のほうが彼女を深く傷つけたのだろうとは思うが、その一言で死に目にも会ってもらえないとは….。やはり家族の間でも言っちゃいけない言葉ってあるんだなあ。

また、モーリス役にデビュー間もないモンゴメリー・クリフトをもってきたのも上手い配役。彼の好感の持てる二枚目ぶりはまさに適役で、男の俺もついつい騙されてしまいました。でもね、彼はそんなに悪い男ではないよね。彼が女を利用するだけの男だとしたら、もっと早く美味しい目を見ているはずだと思う。(って、まだ騙されてる?)

まあ、そんな訳でキャサリンは彼女を裏切った男達に見事復讐を果たすわけであるが、先日見た「花よりもなほ」ではないが、復讐は両刃の剣。あの後、彼女がどんな人生を歩んだのか、他人事とはいえとても心配である。