チャンピオン

1949年作品
監督 マーク・ロブソン 出演 カーク・ダグラスルース・ローマン
(あらすじ)
足の悪い兄と一緒に都会へ出てきたミッジ・ケリイ(カーク・ダグラス)は、彼等が住み込みで働くことになった食堂の一人娘エマ(ルース・ローマン)と愛し合うようになる。しかし、“いつかミスターを付けて呼ばれるようになりたい”と考えている彼は、エマとの生活を棄て、ボクシングで自分の夢を実現しようとする….


“ボクシングに野望をかけた青年の栄光と挫折”を描いた作品なのだが、製作があの真面目なスタンリー・クレイマーということで、ボクシングそのものより、周囲の人間を犠牲にしてまでも成り上がろうとするミッジ青年の悲劇のほうにウェイトが置かれている。

まあ、上昇志向が強いというのも一概に悪いこととは言えない訳で、カーク・ダグラス扮するミッジ君にしたって、決して冷酷非情な人物としては描かれておらず、“できれば裏切りたくなかった”という彼の心情は見ている方にもちゃんと伝わってくる。

終わりの方でミッジ君が一度棄てたはずのエマちゃんに手を出すのも、法律上は彼等がまだ夫婦だということを考えればそれほど非難されるべきものではないだろう。だって、彼は、お兄ちゃんとエマちゃんがイイ関係になりつつあることは知らされていなかったんだよね?

しかし、結果的にではあれ、多くの人々の幸せを踏みにじったのは事実であり、望みどおりチャンピオンになったミッジ君はラストでまさに“命がけ”の防衛戦を闘うことになる。正直、ボクシングシーンの演出はスピードが感じられずやや期待はずれであったが、KO寸前に追い込まれた彼の形相は物凄く、これが以後のカーク・ダグラスの俳優としての方向性を決定したのでしょう。

ところで、この作品にも八百長の話が出て来るのだが、やっぱりボクシングって当時からそんな目で見られていたのかね。それだったら、八百長を公然とルールに取り入れてしまったプロレスのほうがよっぽど健全だ、と元プロレス・ファンの俺は思うのだが。