スター・トレック イントゥ・ダークネス

2013年作品
監督 J.J.エイブラムス 出演 クリス・パインザカリー・クイント
(あらすじ)
西暦2259年。USSエンタープライズのカーク艦長(クリス・パイン)は、惑星ニビルの探査中に犯した規律違反が原因で副官への降格処分を受けてしまう。しかし、その直後、サンフランシスコの艦隊本部がテロ事件の犯人ジョン・ハリソン中佐の襲撃を受け、多くの士官たちが犠牲になってしまったため、カークは艦長に復帰。惑星クロノスに逃げ込んだハリソンの後を追うことに….


J.J.エイブラムスの監督による新スタートレック・シリーズの第2作目。

この如何にも偽名っぽい名前を持つジョン・ハリソン中佐、一応、艦隊の一員なのだが、ロンドンにある艦隊のデータ基地を爆破し、その対策のために主だった士官たちが艦隊本部に集合するのを見計らって、そこを襲撃するというなかなかの知能犯。いち早く彼の狙いを見破ったカークの反撃に合い、目的を果たせないまま惑星クロノスへ逃亡するのだが、追ってきたカークに対し、自分の正体は遺伝子操作によって超人的な能力を身に付けた“カーン”であることを明かす。

一端のスタートレック・ファンであれば、ここで“おおっ”ってことになるのだろうが、昔見たはずの「スタートレックII カーンの逆襲(1982年)」の題名しか覚えていない俺としては、どうみても英国人にしか見えないベネディクト・カンバーバッチが、モンゴル人風の名前を持つキャラを演じることの違和感の方が先に立ってしまう。

とはいえ、娘のご贔屓でもあるカンバーバッチ君のいかにも傲慢そうな雰囲気は、遺伝子操作によるモンスターという敵キャラを演じるのにもってこいであり、その堂々とした悪役ぶりはなかなか魅力的。古くからのスタートレック・ファンには申し訳ないが、全く新しいキャラとして登場させたほうが良かったように思う。

ストーリーの方は(ご都合主義のオンパレードではあるものの)カークとスポックがお互いの命を救うために全力を尽くす様を感動的に描こうとしているのだが、彼等が奮闘するシーンの背景で多くの名も無き人々の生命が失われていくのが興醒めであり、まあ、このへんがJ.J.エイブラムスの限界なんだろう。

ということで、無事、一連の事件を解決したUSSエンタープライズがようやく(!)5年間の深宇宙探査任務に旅立つところで本作は幕を閉じるのだが、正直、今回のスタートレック・シリーズは戦闘シーンの多すぎるところが最大の問題。次回作以降では、昔のように観客を宇宙の果てにある摩訶不思議な世界へ連れて行って欲しいと思います。