出口のない海

妻がどこからか「出口のない海」のタダ券を2枚入手してきた。日本製の戦争映画やTVドラマ(特に、最近のもの)については偏見をもっており、普通ならスルーするところだが、この作品の脚本のところに山田洋次の名前が….
ということで、山田洋次見直しシリーズ第2弾ということで、余り気が進まない様子の妻と娘を連れて観に行った。

最初の“回天攻撃”の場面、2号機が見事に敵艦を爆破・沈没させたにもかかわらず、そのシーンを全然映さないのを見て「そんなに予算がないのか!」と愕然としてしまったのだが、ラストまできて一応納得。成る程、そういう映画だったのね。
主人公の並木君にしたって、最初、野球のことしか頭になかった彼が、遂には特攻に志願するに至るまでの心理的な変化(成長?)に関する描写・説明がほとんどないんだけど、これにしたって、要するに“な〜んも変わんなかっただけ”ということなんだろうね。確かに、人間、そんなに都合良く成長できるもんじゃないと思うけど、特攻隊員の方々の遺書なんかに過剰な思い入れをする人が観たら、どう思うのかなぁ。

まぁ、だからといって観て面白かったかと言われれば、ちょっと首を傾げざるを得ない訳だが、ここまで戦争映画に付きものの“カタルシス”とか“ヒロイズム”とかを徹底的に拒否した頑固さは、ある意味、たいしたものであり、記憶には残る作品だと思う。

しかし、回天っていうのはヒドい兵器だね。実際、当時の日本の技術水準からしたら、あんなものなんだろうけど、俺にはとても操縦できそうにない。並木君じゃなくたって、あの説明を聞いたら、“こりゃダメだ”って考えたと思うよ。

なお、これまで娯楽映画しか観てこなかった娘の感想は、「つまんなかった」。でも、一部もらい泣きしたシーンもあったとのことで、うん、やっぱり大きくなっているんだね。