わが命つきるとも

1966年作品
監督 フレッド・ジンネマン 出演 ポール・スコフィールド、レオ・マッカーン
(あらすじ)
16世紀初頭のイギリス。大法官に任命されたトマス・モア(ポール・スコフィールド)はローマ法王の意思に反した国王ヘンリー8世の離婚を認めることが出来ず、職を追われる。しかし、高名な彼の社会的な影響力を重く見た国王は、腹心のクロムウェル(レオ・マッカーン)に命じ、陰謀を使って何とか彼を屈服させようとする….


トマス・モアって、「ユートピア」の作者というくらいしか予備知識がなかったけど、高校の世界史で習ったカトリック英国国教会との確執の中で、こんなドラマにも絡んでいたんだね。

題名のとおり、モアは一貫して“信仰に厚く、法と正義を守る信念の人”として描かれており、就職の斡旋を頼みに来た若者を「君は信念を守れない男だ」みたいな感じで切って捨てるし、敵対的な人物に関して「法に反しない限り、悪魔でも守られるべき」みたいな科白も吐く。

まぁ、実際にそういう人だったのかもしれないけど、あんまり主人公が立派すぎると俺みたいな凡人はちょっと引いてしまうんだよね。ポール・スコフィールドの飄々とした演技でかなり救われてはいるんだが、モアが誘惑に負けそうになって悩むというような人間的なエピソードでもあれば、もっと感情移入しやすかったと思う。

それと、モアは貴族ではないため、官職をクビになるとちゃんと生活が苦しくなるんだね。このへんは、今のサラリーマンと同じで、おもしろかった。まぁ、モアくらいの有名人であれば、現代ならマスコミがほっておかないだろうけど。

他の出演者では、若々しいロバート・ショウと既に老けていたウェンディ・ヒラーが見られます。でも、ウォルジー枢機卿を演じていたのがオーソン・ウエルズだということには、最後まで気が付かなかった。不覚。