ミュンヘン

2005年作品
監督 スティーヴン・スピルバーグ 出演 エリック・バナダニエル・クレイグ
(あらすじ)
アヴナー(エリック・バナ)は、イスラエル政府からミュンヘンオリンピック事件の首謀者である「黒い9月」のメンバー11人の暗殺指令を受ける。ただし、政府がしてくれるのは活動資金の提供のみであり、彼はスティーヴ(ダニエル・クレイグ)等4人のメンバーと一緒に、あくまでも“私的な活動”として情報屋からの情報を頼りにターゲットの暗殺を実行する。作戦は順調に進んでいるように思えたが、ある日、逆に彼等が敵の暗殺リストに載せられていることに気付く….


1972年に起きたパレスチナゲリラによるテロ事件を題材にした作品だが、まったくの実話という訳ではないらしい。

5人のメンバーは、イスラエルの有名な諜報機関モサドの精鋭ということなんだけど、リーダー役のアヴナーをはじめ、誰一人それまでの具体的な経歴が説明されないし、爆弾製造役のロバート君にいたっては正規の訓練を受けていないことが後日判明するなど、前半は手違いの連続で“本当に暗殺のプロなの?”っていう感じ。しかし、俺にはそういった人々が暗殺稼業に携わっているという設定のほうが怖かったし、かえって映画としてのリアリティも出ていたと思う。

殺人シーンは沢山出て来るものの、途中で投げ出した「プライベート・ライアン(1998年)」なんかに比べると残酷描写がやや抑え気味になっているため、チキンな俺でもギリギリセーフでなんとか見続けられた。

しかし、アヴナーが自分たちの行動に疑問を抱きはじめるあたりから作品のイメージは一転。彼等の閉塞感が観ているこっちにもヒシヒシと伝わってくるし、きっとこのまんまスッキリしない形で終わるんだろーなぁと思っていたら、案の定、そのとおりになった。

といっても、後半も決してつまらない訳ではなく、全体として無駄を省いたテンポのよい演出は、むしろ面白いといっても良い程なのだが、やはりこういった重いテーマはちょっと苦手です。

それにしても、俺が物心着いたころからず〜と改善の方向性が見いだせないまんまの中東情勢に鑑みて、「シンドラーのリスト(1993年)」を撮った監督が、こういった作品を手がけるに至ったということは、とても興味深い。でも、イスラエルは怒ってるんだろうな。

ということで、前作の「宇宙戦争(2005年)」に引き続き、スピルバーグは、今、監督として絶好調なのではないだろうか。次回は、是非とも、この調子でもう少し軽めのテーマの作品をお願いしたい。