ライアンの娘

1970年作品
監督 デヴィット・リーン 出演 ロバート・ミッチャム、サラ・マイルズ
(あらすじ)
第一次大戦中のアイルランドの片田舎。町で居酒屋を営むライアンの娘ロージー(サラ・マイルズ)は、男やもめの中年教師チャールズ(ロバート・ミッチャム)に惹かれ、想いを打ち明ける。歳の差から最初は躊躇っていたチャールズもロージーの一途な想いにほだされ、めでたく結婚。郊外で二人だけの静かな生活をはじめるが、ロージーはそんな生活にいつしか物足りなさを感じていた。その頃、前線で体と心に傷を負った英国人将校ランドルフが赴任してくる….


要は、「逢びき(1945年)」と同じ人妻の不倫の話。しかし、そこは“巨匠”になったデビット・リーン、作品の随所に挿入されるアイルランドの厳しく、かつ、美しい自然を背景に、砂浜に残る足あとや窓枠の影といった細かいところまで配慮が行き届いた演出を施し、3時間を超える大作に仕上げてしまった。

若い頃にTVで観たことはあったけど、「戦場に架ける橋(1957年)」や「アラビアのロレンス(1962年)」と違い、こういう作品はある程度年をとってから観ないとダメだね。それぞれの登場人物は、悲劇の原因を作ってしまうライアン親娘も含め、みんなとても愛おしく感じられ、今回はとても面白く観ることが出来た。題名のとおり、ロージーはチャールズと結婚した後も、大人になれていないんだよね。

アイルランド問題がベースになっており、イギリスの駐留軍と独立派の衝突とかリンチ事件なんかが起きるものの、あまり人も死なないし、全体として緊迫感みたいなものはほとんど感じられないんだが、逆に、その“まったり感”がとても心地よい作品でした。

出演者では、ロバート・ミッチャムがいつもとはちょっと違う知的な中年男の役を無難にこなしており、感心。あっちの俳優さん達って演技の幅が広いんだよねぇ。また、アカデミー賞に輝いたジョン・ミルズは当然として、アイルランドの自然のように気性の激しい神父役を演じていたトレヴァー・ハワードも好演でした。
それと、ランドルフ役のクリストファー・ジョーンズの雰囲気がピーター・オトゥールにそっくりなんだけど、デビット・リーンのイメージする二枚目って、あんな感じなのかね。