記憶の代償

1946年作品
監督 ジョセフ・L.マンキーウィッツ 出演 ジョン・ホディアク、ナンシー・ギルド
(あらすじ)
戦場での負傷が原因で記憶喪失となったジョージ・テイラー(ジョン・ホディアク)は、復員後、出征前に預けてあった鞄の中から「俺を探せ」を書かれた一通の手紙を発見する。自分の過去を知るべく、たまたま知り合ったクラブ歌手のクリスティ(ナンシー・ギルド)の助けを借りながら、その手紙の差出人であるクラバットという人物を捜し始めるが、彼は大金と一緒に姿を消してしまっていた....


マンキーウィッツの初期監督作品。
「幽霊と未亡人(1947年)」の前年の作品であるが、出演者はあちらと違って非常に地味な俳優ばかりであり、往年の大スターを眺めるという楽しみは皆無。で、もっぱらマンキーウィッツならではの凝った脚本に期待が寄せられる訳であるが….

“記憶喪失の主人公が捜していた自分の過去を知る男の正体は、何と○○!”という衝撃的なストーリーは、作品を創る方にとっても非常に魅力的なものだとは思うが、さすがのマンキーウィッツにしても辻褄合わせが難しかったようだ。
冒頭、主人公は、何故かテイラーという名前が自分の本当の名前ではないことを確信し、記憶喪失であることを病院や軍隊に隠して除隊するのだが、このへん、最初から違和感ありすぎ。
また、警察でも捜しているクラバットの顔を誰もちゃんと知らないという設定も苦しいし、鍵となる鞄の中から見つかった手紙の存在理由が最後まで不明のまんまというのもいかがなものか。まぁ、一部こじつけみたいな説明なら可能なものもあるが、全体的にスッキリしないという印象はまぬがれない。

昔読んだ小松左京の短編にも似たようなストーリーの作品があったけど、やっぱりSF仕立てにでもしないとこのネタは料理が難しいのかもしれないね。