今日は、妻と二人で三谷幸喜監督の最新作「記憶にございません!」を見てきた。
個人的にはタランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が第一候補だったのだが、上映時間が161分と長く、タランティーノ・ファンでも無い妻に3時間弱の長丁場を付き合ってもらうのは少々気が引ける。そんな訳で夫婦揃って気楽に楽しめそうなこっちの作品に変更し、平塚ラーメン二代目&クリーンパーク茂原経由で映画館へ向かう。
さて、ストーリーは、傍若無人な政権運営のために史上最悪のダメ総理と呼ばれていた黒田総理が、聴衆の投げた石が頭に当たったときのショックで記憶を失ってしまうという設定。混乱を避けるためその事実を隠して公務に復帰した彼は、記憶喪失のまま客観的に自らの政治家人生を見つめ直すことになり、その結果、自らの過ちに気付いて生まれ変わろうと決意する…
中井貴一演じる記憶喪失前の黒田総理は、人目も憚らずに暴言は吐くわ、賄賂は受け取るわ、不倫・セクハラはするわといった具合にとても分りやすい悪徳政治家として描かれており、まあ、実態はいずれにしろ、あれだけ表面を取り繕うともしない政治家は今の政界では存在し得ないだろう。
おそらくそれは本作の主人公が特定の政治家をモデルにしていると見られないようにするための配慮であり、観客に“あの黒田総理に比べれば、今の政治家はまだマトモだよね”という印象を与えたかったのかもしれない。一応、現政権のトランプ追従外交を批判するような姿勢が見られた点は評価できるが、恰好のネタである森友・加計問題に関してはアンタッチャブルの立場を崩しておらず、政治風刺としても相当物足りない。
そして本作の最大の問題は、そのハッピーエンド的な結末に国民が一切関与していないところであり、結局、政治を変えることが出来るのは政治家だけという彼らの無力感をそのまま上書きしてしまっている。まあ、脚本&監督を担当している三谷幸喜に“革命”を期待する方が間違っているのだろうが、厚顔無恥が売り物の現政権に対して“改心”を期待するのはそれ以上に非現実的なことだと思う。
ということで、いつもに比べて観客の年齢層がかなり高いのが気になったが、まあ、日頃マーベルやディズニーに現を抜かしているこちらの方が異常なのであり、妻に言わせると本作のような映画が“年相応”なんだとのこと。しかし、こんな生ぬるいお湯にばかりつかっていたら風邪を引いてしまうのは必至であり、う~ん、ここはやっぱりタランティーノにしておくべきだったのかもしれません。