天気の子

今日は、妻&娘と一緒に新海誠監督の新作アニメである「天気の子」を見てきた。

最大の鑑賞動機は“他に面白そうな映画が無かったから”という少々消極的なものであるが、まあ、あれだけ大ヒットした「君の名は。(2016年)」の後で何をやらかしてくれるのかという興味が無かった訳でもない。TVのCMを見た限りでは前作よりSF色は減退しているようだが、そのスキ間を何で埋めているのだろうと考えながら映画館へ。

さて、ストーリーは、家出をして東京に出て来た高校生の主人公が、そこで出会った“100%の晴れ女”の少女と恋に落ちるという恋物語。実は、その少女には“降り続く雨を青空に変えるための人柱”という苛酷な使命が課せられていたのだが、主人公が彼女を救い出してしまったため、降り止まない雨のせいで東京の1/3が水没してしまう…

正直、SF色が薄まった点に関しては何の手立ても講じられていないため、割とストレートなラブ・ストーリーになってしまっているのだが、降り続く雨によって水没していく東京の姿を、経済力の低下によって貧困の拡大していく我が国の現状に置き換えて見てみれば、まあ、還暦過ぎの老人にとっても興味惹かれるところが無きにしも非ず。

序盤の方で、生活苦から少々いかがわしそうな職業に就こうとするヒロインを、主人公が必死になって止めようとするエピソードが出てくるのだが、おそらくこれがこの作品全体のテーマであり、それは“好きでもないことのために自分を犠牲にするのはお止めなさい”ということ。

勿論、この世の中には“責任”というものがあり、イヤなことでもやらなければならないときがある訳だが、それを過大視するのは禁物であり、例えば時給1,000円にも満たないアルバイトにお客のクレーム処理を任せるなんてことはあってはならない。本作のヒロインの立場もこれと同じであり、我が身を犠牲にして東京を水没から救うなんていう責任からは、さっさと逃げ出してしまうのが大正解。

しかし、そうは言ってもそれで問題が解決される訳ではないのも事実であり、水没の危機から東京を救うために政治や行政はありとあらゆる対策を講じなければならない。その意味からすると本作のラストは極めて悲観的であり、おそらく今の若者たちは政治や行政に対して何の期待も抱いていない(≒前作を見たときにも感じた両親の不在。少し昔の作品なら、街が水没したところから物語を始めると思う。)のかもしれないなあ。

ということで、本作を見た翌日に行われた参院選投票率は極めて低調であり、なかでも18歳と19歳の投票率は1/3にも満たなかったらしい。まあ、現政権のやっていることを見れば彼らの無力感を非難する気にもなれないが、当面、いつの日か新海監督が本作の続きを作りたくなるような時代が来ることを願って、努力し続けるしかないのでしょう。