この茫漠たる荒野で

2020年
監督 ポール・グリーングラス 出演 トム・ハンクス、ヘレナ・ゼンゲル
(あらすじ)
1870年の米国テキサス州。各地を転々としながら聴衆に新聞記事の読み聞かせをすることを生業にしていた退役軍人のジェファーソン・カイル・キッド大尉(トム・ハンクス)は、ひょんなことから、カイオワ族に育てられた白人少女ジョハンナ(ヘレナ・ゼンゲル)を彼女の親戚の元へ送り届ける役目を引き受けることになる。しかし、その地域の治安は最悪であり、旅は長く、そして厳しいものになることが予想された…


我が国では劇場公開が見送りになってしまったポール・グリーングラス監督の最新作。

コロナ禍や全米での興業成績が振るわなかったことが影響しているにしても、グリーングラストム・ハンクスのコンビによる作品をお蔵入り(?)にしてしまうのは、とんでもない暴挙としか言いようがない。仕方がないので、半年くらい前に解約していたNetflixとのヨリを戻し、たまたま休みで家でゴロゴロしていた娘と一緒に鑑賞に臨む。

さて、内容はいたって王道の西部劇映画であり、最初は「勇気ある追跡(1969年)」みたいな話になるのかと思って見ていたのだが、ストーリーは、初老の主人公と英語の話せない少女との心の交流を描くことがメインになっており、ラストの展開を含めて、むしろ西部劇版の「ペーパー・ムーン(1973年)」と言うべきかもしれない。

主演のトム・ハンクスの年齢を考慮してか、アクション・シーンは控え目であり、グリーングラス監督お得意の手持ちカメラによるハラハラドキドキの映像は見られないものの、西部の大荒野を背景にした美しい映像は、まあ、彼の新境地と好意的に評価することも可能。返す返すも映画館の大スクリーンで見てみたかった。

ちなみに、原題は原作小説と同じ「News of the World」であり、正直、本作のイメージからするとちょっと違和感があるのだが、ひょっとすると、当初の構想では、例の“独裁者が発行する自画自賛のインチキ新聞”に関するエピソードをもっと膨らませて、“フェイクニュース批判”をメインにしようとしていたのかもしれないね。

ということで、これで現在我が家が契約している配信サービスは、アマプラ、U-NEXT、ディズニープラス、そしてNetflixの4社になってしまった。まあ、コロナ前は月に1、2回、家族で映画館に通っていたことを思えばこれでもむしろ安上がりなのだが、できれば国営放送に成り下がったNHKだけでも解約したいところです。