女神の見えざる手

2016年
監督 ジョン・マッデン 出演 ジェシカ・チャステインマーク・ストロング
(あらすじ)
大手ロビー会社の剛腕ロビイストであるエリザベス・スローン(ジェシカ・チャステイン)は、ある日、有力な銃擁護派団体から新たな銃規制法案の成立を阻止して欲しいとの依頼を受ける。これを断ったことで上司から厳しく叱責された彼女はあっさり会社を辞めてしまい、シュミット(マーク・ストロング)率いる銃規制派の弱小ロビー会社に移籍。そこで銃規制法案の成立に向けて強力なロビー活動を繰り広げる…


米国におけるロビー活動の実態を描いた社会派サスペンス映画。

勿論、ジェシカ・チャステインがお目当てで見てみたのだが、彼女が扮しているスローン女史はロビー活動を成功させるためなら手段を選ばない非情の女。知能は極めて優秀だが食事を含めて仕事以外には興味が無く、ストレス発散のためにたまに男娼を買うくらい。そして、さらに悪いことには自由貿易を信奉する(おそらくは)新自由主義者

まあ、そんな訳で個人的には少々感情移入しづらいキャラクターになっているのだが、幸い(?)彼女に敵対する銃擁護派の面々がそれに輪をかけて醜悪な人物ばかりなので、何とか勧善懲悪ものとして見ていられる。作品中に固有名詞は出てこないが、「有力な銃擁護派団体」というのはあの全米ライフル協会のことだろう。

さて、エリザベスが推し進めていた銃規制法案の成立はある事件がきっかけで暗礁に乗り上げてしまい、彼女自身も過去の違法行為が発覚して議会の聴聞会に召喚されてしまう。しかも、その聴聞会を取り仕切っているのは銃擁護派によって買収された老獪な上院議員であり、まさしく絶体絶命の大ピンチ!

132分の上映時間もほとんどを使い果たしてしまったが、何とそこから胸のすくようなハッピーエンドに結び付けるのだから新人ジョナサン・ペレラによる脚本の素晴らしさは圧倒的。本作があまりパッとした興行成績を残せなかったというのは少々信じ難い事実であり、そのへんに米国における銃規制の難しさが影響しているのかもしれないなあ。

ということで、とても良く出来た面白い作品だったが、まあ、唯一残念なのは本作が実話ベースでは無いっていうところ。米国に限らず、政治の世界では“圧力団体との癒着”なんて日常茶飯事なんだろうが、そこで本作のような痛快などんでん返しが起きる可能性はほぼ皆無であり、それに抗った現実のエリザベスたちの努力を我々が知ることも無いのでしょう。