キャッツ

今日は、妻&娘と一緒に今、何かと話題のミュージカル映画「キャッツ」を見てきた。

レ・ミゼラブル(2012年)」のトム・フーパー監督があの「キャッツ」を映画化するというので、家族一同、とても楽しみにしていた作品なのだが、一足早く昨年末に公開されたアメリカから聞えてくるのは轟々たる悪評の嵐。確かに予告編を見たときには俺も少々驚いたが、そんなに酷いことになっていたとは露知らず、怖いもの見たさ半分のような複雑な心持ちで映画館へ向かう。

さて、ストーリーはお馴染みの「キャッツ」であり、ジェリクルキャッツによるユニークな歌や踊りの後、長老によって選ばれたグリザベラが天に昇っていくという内容は、基本的に舞台と変わらない。一番の違いは、映画では「ペケスとポーラーの恐ろしい戦い」のパートが省略され、代りにヴィクトリアの歌う新曲「ビューティフル・ゴースト」が追加されているところだろうが、まあ、それにしてもストーリーに直接関わるようなものではない。

では、一体何が悪評の原因になったのかであるが、第一に考えられるのは、CGIフル活用による体毛、ネコ耳、そしてシッポを身に付けた出演者たちのフォルム。俺も予告編で初めてお目にかかったときには度肝を抜かれたものだが、その後、映画館に足を運ぶ度に見ていたのですっかり慣れっこになってしまい、正直、今回は“美しい”とさえ思ってしまった。

事後情報によると、日本で公開されたのはCGIの不具合等を調整した「修正版」だそうであり、その効果なのかもしれないが、真っ白な体毛を纏ったヴィクトリアの姿はとても可愛らしく、彼女のバレエを見ているだけでとても幸せな気分になれる。したがって、これから本作を見に行こうという方には、あらかじめ予告編を10回くらい鑑賞しておくことをお勧めしたい。

次の問題は“ストーリーが分りづらい”という点であろうが、これに関してトム・フーパーは完全に無罪であり、むしろヴィクトリアを主役というか、狂言回し的な位置づけにすることにより、舞台よりずっと分かりやすい作品に仕上がっている。新曲「ビューティフル・ゴースト」も本作のテーマの明確化に貢献しており、監督としてのこれだけの努力が評価されないのは誠にお気の毒としか言いようがない。

しかし、本作で初めて「キャッツ」という作品に触れた人の身になって考えると、まあ、トム・フーパーの計算違いもあったのかもしれない。その一つがレベル・ウィルソンの使い方であり、初見の観客がまだ「キャッツ」の世界観に十分馴染んでいないうちにこの爆弾娘を投入したのは、ちょっと不味かったかもしれない。舞台と違ってしまうが、テイラー・スウィフトあたりと出番を交替しておけば、観客の“忌避感”も随分緩和されたように思う。

ということで、個人的には十分合格点を差し上げられる内容であり、大きな不満はないのだが、心配なのは、本作の大コケがトム・フーパーをはじめとする本作の関係者に悪影響を及ぼしてしまうこと。特に、本作が映画デビューとなるヴィクトリア役のフランチェスカ・ヘイワードは、ミュージカル界にとっても大切な宝物であり、本作の評価を気にすることなく、どんどん新作に挑戦して欲しいと思います。