マリッジ・ストーリー

2019年
監督 ノア・バームバック 出演 スカーレット・ヨハンソンアダム・ドライヴァー
(あらすじ)
舞台演出家のチャーリー(アダム・ドライヴァー)と女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)の夫婦は、現在、離婚協議中。最初は二人の話合いで済ませるつもりだったが、そのままニューヨークで暮らしたいチャーリーと母親らの住むロサンゼルスに帰りたいニコールとの間で、一人息子のヘンリーに対する養育権をどうするかが問題になってしまい、結局、ニコールは有能な弁護士のノラに依頼することに…


今年のアカデミー賞で作品賞をはじめとする6部門にノミネートされているNetflix映画。

茶の間で見られるという手軽さのせいもあって、最初は日本語吹替え版で見ていたのだが、ニコールがチャーリーとの出合いから破局までの経緯をノラに説明するシーンを見ていて、思わず字幕版に切り替える。いや、それほどこのシーンにおけるスカーレット・ヨハンソンの喜怒哀楽の表情は真に迫っており、彼女自身の声が聞きたくなってしまうんだよね。

しかし、それ以上に驚いたのはアダム・ドライヴァーの名演技であり、まあ、スカヨハは「真珠の耳飾りの少女(2003年)」の頃から見ているので演技が上手いのは分っていたが、スター・ウォーズ・シリーズと「ブラック・クランズマン(2018年)」くらいでしかお目にかかったことのない怪優アダム・ドライヴァーが、こんな素直で愛おしい青年役を演じられるというのはちょっと驚異的。

そして、そんな二人がそれまで抱えていた怒りをお互いにぶつけ合う終盤のシーンが本作のハイライトであり、「お前なんか死ねばいい」という酷い言葉をニコールに投げ付けたチャーリーはそのまま床に泣き崩れてしまう。勿論、それが彼の本音ではないことはニコールも承知しており、そんな彼の元に寄り添ってとりあえず仲直り。

正直、チャーリーが離婚を望んでいないのはバレバレであり、ニコールにしても彼に対する愛情を決して失った訳ではない。しかし、自分の望む女優=表現者としての人生が彼との結婚生活と両立し得ないことを彼女は良く分かっており、結局、離婚が成立してちょっとホロ苦いハッピーエンド。チャーリーはまだ未練たっぷりのようだが、既にニコールは新しい人生を歩み始めており、おそらく全面降伏でもしない限り、復縁は難しいのではなかろうか。

ということで、ドロドロの離婚騒動を題材にしているのだが、見ていて不快にならないのはチャーリーもニコールもとても良い人間であり、お互いのことを尊敬し合っているから。まあ、小品なのでアカデミー作品賞は難しいかもしれないが、ノラ役を演じたローラ・ダーン助演女優賞ランディ・ニューマンの作曲賞に期待したいと思います。