ウインド・リバー

2017年
監督 テイラー・シェリダン 出演 ジェレミー・レナーエリザベス・オルセン
(あらすじ)
ネイティブアメリカンの保留地ウインド・リバーで野生生物局のハンターとして働いているコリー(ジェレミー・レナー)は、ある日、雪の荒野に倒れていた少女の遺体を発見する。やがて現場確認のためにFBIの新人捜査官ジェーン(エリザベス・オルセン)がやってくるが、検死の結果、直ちに殺人事件とは判断し難いことが判明し、FBIではなく、手薄な部族警察が事件の捜査に当たることになる…


脚本家出身であるテイラー・シェリダンの初監督作品。

西部劇の面白さを支えてきた要素の一つに当時の警察組織の脆弱さというものがあり、正義の被害者は警察の助けを借りることなく、または保安官とせいぜい数人の助手といった頼りない態勢で、盗賊団をはじめとする悪の集団と命懸けの闘いを繰り広げなければならなかった。

したがって、警察組織が強化され、人的にも、装備的にも加害者側を大きく上回るようになった時点で西部劇はその使命を終えるはずだったのだが、そんな時代変化にもいくつかの例外があるようであり、その一つが本作の舞台となるネイティブアメリカンの保留地。その広大な地域には警察官がわずか6人しかおらず、まさに西部劇さながらの無法地帯が広がっていた!

実を言うと、FBI捜査官のジェーンはそもそもこの事件の捜査のために派遣されてきた訳ではなく、当然、経験も土地勘も全くないのだが、責任感だけは人一倍のようであり、被害者の少女をレイプし、結果的に死に追いやった犯人を自ら捕まえようと決意する。それを“見ちゃいられねえな”的にサポートするのがジェレミー・レナー扮するスゴ腕ハンター(=といっても弓矢は使わない。)のコリーであり、まあ、「勇気ある追跡(1969年)」みたいなものといったらスカーレット・ウィッチに失礼かな。

正直、事件の内容は単純であり、ミステリイ作品としての評価はそう高くないのだが、じわじわと真実に迫っていく比較的ゆったりしたペース配分と、それが一気に爆発する壮絶な銃撃戦の描写はなかなか見事であり、鑑賞後、久しぶりに面白い西部劇を見せてもらったという感動で胸が一杯になってしまった。

ということで、とても面白い作品に仕立て上げられているのだが、その一方でネイティブアメリカンの保留地に暮らす人々の苦悩みたいなものをきちんと真面目に取り上げているところにも好感が持てる。ちょっと残念だったのは主演の二人がともに白人だった点であり、そんなところまで西部劇に拘る必要はなかったように思います。