ブリグズビー・ベア

2017年
監督 デイヴ・マッカリー 出演 カイル・ムーニー、マーク・ハミル
(あらすじ)
25歳の青年ジェームス(カイル・ムーニー)は、荒野に建つシェルターのような家で両親と一緒に外界から隔離された生活を送っていた。彼の一番の楽しみは、子どもの頃から毎週ポストに届く教育ビデオ「ブリグズビー・ベア」を見ることだったが、そんなある夜のこと、突然、数人の警察官が家の中に押し入ってきて両親を逮捕。彼らは25年前に赤ん坊だったジェームスを誘拐した犯人だった…


我が国では昨年6月公開され、一部で高い評価を受けているコメディ映画。

出だしはまったくヒドいものであり、主人公の見ている「ブリグズビー・ベア」の映像にしても、彼の住んでいるシェルターの造作にしても、いかにも嘘っぽいものばかり。しかし、その後のタネあかしによると、それらは誘拐犯の片割れであるテッド(マーク・ハミル)が手作りにより創り上げた虚構世界の産物であり、嘘っぽいのは当たり前。

しかし、生まれてからずっとその世界で生きてきたジェームス君にしてみれば、誘拐犯は彼のことを愛してくれたやさしい両親であり、「ブリグズビー・ベア」は我々にとっての鉄腕アトムウルトラマンを超える唯一無二のヒーローに他ならない。それは、もう動かしがたい“現実”であり、それを否定することは彼のそれまでの人生を否定することになってしまう。

本作は、この、一般的な常識からすれば“腐りきった現実”の上に大輪の感動の花を咲かせられるかという、神をも畏れぬ無謀な挑戦なのだが、どうやらそれに成功してしまっているところが困りものであり、全く不本意ながら(?)何度か目頭を熱くしながら最後まで楽しく鑑賞させてもらってしまった。

ちなみに、こう書いていくと、何だか先日見た「カメラを止めるな!(2017年)」に通じるところがあるように思えるが、それは両作品とも一発勝負的な大ネタをベースにしているというところだけ。金のかけ方の面では大違いであり、おそらく「ブリグズビー・ベア」のチープな映像を作るためにはそれなりの資金が投入されているのだろう。

ということで、誘拐犯の養父役を演じているマーク・ハミルは、正直、恐ろしいくらいのハマリ役であり、“スター・ウォーズ”という虚構世界にはまり込んでしまった彼は、間違いなくその世界におけるジェームス君の父親なんだろう。これからも各方面でその怪優ぶりを発揮して欲しいと思います。