影なき殺人

1947年作品
監督 エリア・カザン 出演 ダナ・アンドリュース、リー・J・コッブ
(あらすじ)
コネチカット州のある町で市民から慕われていた神父が何者かに銃殺されるという事件が発生する。地方検事のハーヴェイ(ダナ・アンドリュース)は警察署長のロビンソン(リー・J・コッブ)とともに捜査にあたるが、決定的な証拠がなく事件は長期化。反市長派が市民の関心の高いこの事件を政治的に利用しようとしたことから、ハーヴェイ達に早期解決のプレッシャーがかかるが、そんなとき一人の容疑者が浮かび上がる….


エリア・カザンが「紳士協定(1947年)」でアカデミー監督賞を受賞する直前に公開した作品。

最初は普通のミステリイ映画風にスタートするんだけど、捜査がなかなか進展しないところに目を付けた反市長派の一味が、それを現体制の無能ぶりを示す証拠としてマスコミを使って体制批判のキャンペーンを始めるあたりから、ちょっと様相が変わってくる。

被害者である神父の人気が高かったこともあり、多くの市民がそのキャンペーンに同調したことから、普段は有能で冷静なはずのロビンソン署長もついつい焦ってしまい、容疑者として逮捕した男を攻め立て、無理やりといった感じで自白を引き出してしまう。さらには有力な物証や目撃証言も揃ったことから、その容疑者は“有罪間違いなし”といった状況で裁判にかけられることになる。

まあ、最終的には正義感の強いハーヴェイ地方検事の活躍により、その容疑者が無罪であったことが明らかになるんだけれど、この“マスコミに誘導された世論の怖さ”というテーマをいち早く採用した先見の明は大したものであり、「影なき殺人」という邦題もなかなか気が利いている。なお、原題は「Boomerang!」で、我々に対する警告という意味ではこっちも悪くない。

出演者の方はちょっと地味目であるが、主演のお二人以外にもカール・マルデンアーサー・ケネディといった実力者を揃えており、また、ハーヴェイの妻役のジェーン・ワイアットも素敵でした。

ということで、88分という限られた上映時間に収める必要からか、最後の裁判劇がちょっと一方的な内容になってしまい、サスペンスの盛上げに欠ける点がちょっと残念ではあるが、事件が迷宮入りのままで観客が欲求不満にならないよう、ラストでちゃんと真犯人らしき人の“その後”も描いて頂いており、エリア・カザン、流石です。