トップハット

今日は、妻&娘と一緒に東急シアターオーブで開演中の「トップハット」を見てきた。

エストエンド版「TOP HAT」は3年前に観賞済みであり、それが日本人キャストで上演されるというニュースには、正直、あまり興味はなかったのだが、主演を務めるのがV6の坂本クンであることを知った娘から急なリクエストが入って大慌て。ネットで調べたところその時点で土日のS席は完売状態であり、やむなくA席初体験ということになってしまった。

さて、例によってヒカリエ内の「Cafe&Grill SIZZLE GAZZLE」というレストランでオシャレな昼食を済ませてからシアターオーブに移動。指定された席は3階の後から2列目ほぼ中央であり、階段状になっているため前列の人はほとんど邪魔にならないものの、ステージはまさに“見下ろす”といった感じ。これじゃあ出演者の頭頂部しか見えないんじゃなかろうか。

そんな不安をよそにステージは“Puttin’ on the Ritz”の軽快なダンスで幕を開け、やはり脚本や演出はウエストエンド版を忠実になぞっているらしい。ジェリー役の坂本クンをはじめ我が国のダンサーたちのスタイル向上は明らかであり、昭和のタップダンサーたちが払拭できなかった軽業師的なコミカルさを微塵も感じさせないあたりはとても素晴らしい。

ちょっと心配していた歌の方もなかなか達者なものであり、声を張り上げない抑制の取れた歌唱方法はご本家のフレッド・アステアみたい。正直、見る前はあまり期待していなかったのだが、坂本クンのミュージカル俳優としての能力は相当高く、今後、どのような大物スターに成長していくのかとても楽しみになった。

一方、デイル役の多部未華子の歌と踊りはまだまだであり、「Cheek to Cheek」のダンスシーンが本作のクライマックスになり得ていないのもそのせいだと思うが、女優としての実力は(当時の)ジンジャー・ロジャースを上回っており、まあ、その可愛らしい声を聴いているだけで大抵のことは許せてしまう。

そんなことを含め、ミュージカルとしての水準は3年前のウエストエンド版には及ばないものの、コメディとしてはこっちの方がずっと面白い。“頭頂部しか見えない”という当初の不安も全くの杞憂であり、時々、双眼鏡を使って出演者を確認する必要があるのは難点だが、本作のように出演者数の多い舞台では、ステージ全体を見渡すことが出来たのはむしろ好都合だった。

ということで、今年のミュージカル観劇もこれが最後になる訳だが、来年のシアターオーブのラインナップにブロードウェイやウエストエンドからの来日公演が一つも見当たらないのがとても心配。日本人俳優の成長は認めるものの、英語の歌は英語で聞きたいというのが俺の望みであり、う〜ん、こういうミュージカル・ファンって少数派なんでしょうか。