プーと大人になった僕

今日は、妻&娘と一緒にディズニー映画の最新作である「プーと大人になった僕」を見てきた。

往年の名作アニメの実写化に精力的に取り組んでいるディズニー映画であるが、「シンデレラ(2015年)」、「美女と野獣(2017年)」といったようにこれまでの興行成績はなかなかのものらしい。邦題からも分かるとおり、本作は単なるアニメの焼直しではなさそうだが、予告で見たプーさんの可愛らしさが忘れられず、はやる気持ちを抑えながら映画館へ。

さて、ストーリーは、第二次世界大戦後、大人になってロンドンの会社で働いているクリストファー・ロビンの元へ久しぶりにプーが訪ねて来るというもの。業績不振の続く旅行カバン部門の責任者である主人公は、日夜残業続きのため妻や娘とのんびり休暇を過すことも出来ずにいたのだが、プーやその仲間たちとの再会を通して忘れていた子どもの頃の心を取り戻す、っていうストーリーは、まあ、想像どおりとしか言いようがない。

また、プーが主人公を訪ねてきた“いなくなった仲間たちを探して欲しい”という用件にしても、決して深刻なものではなく、風の音(?)をズオーの声と聞き間違えたピグレットたちが勝手に身を潜めていただけ。アクションらしいアクションが見られるのは、主人公が100エーカーの森に忘れていった書類を娘のマデリーンがプーたちと一緒にロンドンに届けに行くシーンだけであり、正直、それ以外はちょっぴり退屈なくらい。

しかし、本作のテーマが“何もしない”であることを考えれば、この退屈さにも立派な意味がある訳であり、それに腹を立てるのは子どもの心を失ってしまった大人の悪いところ。おそらく、単純に面白くしようと思えばいくらでも面白く出来たのだろうが、そこをグッとこらえてみせたマーク・フォースター監督の決断はお見事であり、それに不満な人はパディントンを見に行けば良いのだろう。

ちなみにちょっと意外だったのは、主人公やマデリーン以外の普通の大人でもプーたちの声を聴くことが出来るという点であり、あれって子どもの空想の世界だけの話では無かったんだなあ。また、プーさんの姿は、現在、ディズニーランドで販売されている物とは随分違っていたんだけど、今後、新バージョンが作られる予定はあるのだろうか?

ということで、子どもの頃の主人公がプーに教えた“Doing nothing”のアイデアは、経営者側の“Nothing comes from nothing”という“常識”に対する見事なカウンターパンチになっており、それが有給休暇の制度化に繋がるというのが本作のオチ。しかし、“努力することが善で楽をするのは悪”という常識は様々な分野でいまだ健在であり、現政権の進める働き方改革も決してその例外ではないでしょう。