1983年作品
監督 大林宣彦 出演 原田知世、高柳良一
(あらすじ)
尾道に住んでいる芳山和子(原田知世)は高校2年生の女の子。ある土曜日の放課後、クラスメイトの深町(高柳良一)や吾朗と一緒に理科教室の掃除をしていた彼女は、人の気配に誘われて入った隣の実験室でラベンダーのような香りを嗅いだ途端、気を失ってしまう。間もなく保健室のベッドの上で目を覚ますが、それ以降、彼女の周囲では時間の流れが不規則になってしまったような…
今年のGWの家族旅行は広島県の予定であり、勿論、今まで訪れたことのない尾道にも足を伸ばしてみるつもり。その際は映画のロケ地巡りもしてみたいので、昔の記憶を取り戻すために今から35年前に公開された本作を妻&娘と一緒に再見してみることにした。
さて、最初に拝見させて頂いたのがいつだったかは憶えていないが、映画館へ見に行った記憶は無いので、おそらくTVかビデオで見たのが最初だったのだろう。当時は熱心なSFファンだったこともあり、NHKドラマや原作小説とは一風異なる情緒的な演出に少々戸惑った憶えもあるが、決して気に入らなかった訳ではなく、子どもたちが小さかった頃にも一緒に見ていたと思う。
それから数十年、今回久しぶりに見直してみた訳であるが、一番驚いたのは本作の完成度の高さであり、これまで“所詮はアイドル映画”という思いが心の何処かに引っ掛かっていたせいかもしれないが、こんなに良く出来た作品だとは全く気付かなかった。
勿論、主演を務める原田知世と高柳良一の演技が学芸会レベルなのは間違いないのだが、その拙い演技が本作の情緒的なイメージにピッタリと当てはまっており、そこから生み出されるふんわりとした非現実感が何だかとても心地よい。おそらく芸達者の小林聡美&尾美としのりコンビでは、こうはいかなかったに違いない。
ということで、そのふんわりとした非現実感をしっかり受け止めているのが古めかしい尾道の風景であり、その現実的過ぎない街並みは本作の背景にこれまたピッタリ。まあ、既に35年の歳月が経っているということで、撮影当時と同じ感覚を味わうのは難しいかもしれないが、ロケ地となった艮神社やタイル小路は今でも見学できるようであり、時間が許せば是非立ち寄ってみたいと思います。