1984年
監督 アラン・パーカー 出演 マシュー・モディーン、ニコラス・ケイジ
(あらすじ)
ベトナム戦争で負った顔面の火傷の治療を受けていたアル(ニコラス・ケイジ)は、軍の精神病院で働いている軍医の招きに応じ、顔に包帯を巻いたままの状態でその精神病院を訪れる。そこに収容されていたのはやはり戦争で心を病んでしまったかつての親友バーディ(マシュー・モディーン)であり、誰からの呼びかけにも反応しない彼を現実に呼び戻すため、アルはその傍らで楽しかった高校時代の思い出を語り始める…
アラン・パーカーが「ピンク・フロイド/ザ・ウォール(1982年)」の次に発表した作品。
アラン・パーカーの訃報を耳にして見てみようと思った作品であり、昨夏はついお気に入りの「ザ・コミットメンツ(1991年)」を見てしまったが、それから約半年、ようやく本作を見ることが出来た。ちなみに、今回も「フェーム(1980年)」を見たいという強い欲求に駆られたが、何とか踏み止まることができた。
さて、おそらく本作の上映時間の2/3以上はアルとバーディの高校生時代の回想シーンで占められており、そこでは鳥に対して異常な興味を示すバーディに振り回されるアルの様子が生き生きとコミカルなタッチで描かれている。それに対して、ベトナム戦争で身体や心に傷を負った後の二人の若者の姿は実に哀れであり、この両者の落差の大きさが本作の主張のベースになっている。
鳥になりたいと考えているバーディは、今なら即“自閉症”というレッテルを貼られてしまうのかもしれないが、自分で決めたことは最後まできちんとやり遂げるという信念と自分の弱さを決して隠さないという勇気を併せ持ったキャラクターであり、おそらく一見すると自信家のように見えるアルも、この自分の弱さを堂々と引き受けることができるというバーディの“強さ”に惹かれていったのではなかろうか。
本作のラストは、戦争によってプライドをズタズタにされてしまったアルに寄り添うために、“鳥”になっていたバーディが現実の世界に戻ってくるというハッピーエンドで締めくくられているのだが、おそらくあの30分後には再び非情な現実が二人の前に立ちはだかる訳であり、人間のままその壁を乗り越えるのはなかなか難しいことなのかもしれない。
ということで、もっと他のアラン・パーカー作品も見てみたいのだが、U-NEXTのラインアップに上がっている未見の作品はこれで最後。正直、今のネット配信サービスはどれもこれも同じようなものばかりであり、もっと洋画をはじめとする特定のジャンルに特化したサービスが充実することを強く望みます。