クローバーフィールド/HAKAISHA

2008年作品
監督 マット・リーヴス 出演 マイケル・スタール=デヴィッド、オデット・ユーストマン
(あらすじ)
ニューヨークにある高層アパートの一室では、副社長として日本に赴任することが決まったロブ(マイケル・スタール=デヴィッド)を祝福するサプライズ・パーティが開催されており、ガールフレンドのベス(オデット・ユーストマン)も少し遅れてやって来る。そのとき、もの凄い振動と共に街の一角が停電してしまい、慌てて外に飛び出した彼等の目前に破壊された自由の女神の頭部が吹き飛ばされてくる….


いわゆる“ファウンド・フッテージ”の形式を採用した新手の怪獣映画。

“撮影”に使われるのは主人公ロブの所有する家庭用のビデオカメラであり、サプライズ・パーティの様子を撮影するために彼の兄が無断で持ち出したという設定。メインで撮影を担当しているのは男友達のハッドであり、まあ、怪獣から逃げ回っている最中もカメラを回し続けるというのはとてもマトモな行動とは思えないが、ハッド自身、あまりマトモそうなキャラでは無いので、一応辻褄は合っている(?)。

さて、通常の怪獣映画であれば、怪獣を退治しようとする側の視点がメインになるのだろうが、本作のカメラは終始主人公たちのグループから離れないので、映像は必然的に被害者側からのものだけに限られてしまう。途中、軍と怪獣とが交戦している現場に彼等を立ち合わせたり、脱出するヘリコプターに乗せたりして映像に変化を持たせようといろいろ努力しているのだが、当然、それにも限界があり、上映時間が85分と比較的短いのもファウンド・フッテージ物の宿命みたいなものなんだろう。

ストーリーも、まあ、冷静になって考えればやや強引過ぎるところがいくつか思い当たるのだが、総じて見れば、ドキュメンタリイ・タッチな映像の有する魅力はそういった欠点を大きく上回っており、ファウンド・フッテージ物としては成功の部類に入るのだろう。(ただし、柳の下のドジョウはそう多いとは思えないので、続編を作るなら通常の形式で撮るべきだね。)

ということで、本作の怪獣もそうなのだが、ハリウッド映画に登場する怪獣はあまりにも非人間的であるため、コミュニケーションの可能性はおろか、その心情(?)に思いを馳せる余地さえ見いだせないのは、正直、やや物足りない。キリスト教によるアニミズムの破壊はそれ程徹底したものだったのでしょうか。