北京の55日

1963年作品
監督 ニコラス・レイ 出演 チャールトン・ヘストンエヴァ・ガードナー
(あらすじ)
1900年初夏。西太后が支配する紫禁城では、外国勢力を一掃するために山東省で蜂起した義和団の勢力を利用すべきか否か、連日のように議論が戦わされていた。北京を訪れていた米海兵隊のルイス少佐(チャールトン・ヘストン)は、偶然知り合ったロシア男爵未亡人のナタリー(エヴァ・ガードナー)とお互い惹かれ合うようになるが、丁度そのとき、ドイツ公使が義和団によって殺害されるという事件が起きる....


ニコラス・レイの(実質上)最後の監督作品となる戦争巨編。

義和団事件の勃発により、北京の公使館区域内に篭城せざるを得なくなった列強諸国の公使やその護衛兵たちの活躍を描いた作品であり、天津から援軍が到着するまでの55日間、彼等は僅か500人足らずの兵力で圧倒的な数の中国軍(=義和団+政府軍)の猛攻を食い止めなければならなくなる。

大局的に見れば、強者は列強諸国で中国側は弱者であり、理が後者にあるのは明白なのに対し、本作では場所と時間を限定することによって両者のこの関係を逆転させ、あたかもルイス少佐率いる護衛兵が正義の味方であるかのような錯覚を生み出そうとしているのだが、まあ、とても成功しているとは思えない。

しかも、その正義の味方の一員として我らが大日本帝国が参加しているのだが、彼等が欧米人と協力して“野蛮なアジア人”と戦う姿を見せられるのは何とも不思議な体験であり、このあと結局は日中戦争を引き起こすことを知っている身としては、誠に恥ずかしい限り。実在の人物であるという柴五郎に扮した伊丹十三は、いったいどんな気持ちでこの役を演じていたのだろうか。

まあ、北京篭城を主張する英国公使ロバートソン卿(デヴィッド・ニーヴン)の真意が中国と列強諸国との全面戦争を回避することにあったり、ルイス少佐が異国の地で戦うことの違和感を口にするあたりに、ちょっぴりニコラス・レイらしい(?)配慮が感じられるものの、「夜の人々(1949年)」の監督が撮った作品としては少々残念な内容だった。

ということで、こういった事情を無理やり全部無視してしまえば、かなりお金がかけられている戦闘シーンはそれなりに見応えがあり、特に手作り感たっぷりの中国軍秘密兵器には一見の価値がある。おそらく、あと100年もすれば昔の西部劇と同じ感覚で見られるようになるのかもしれません。