ウォルト・ディズニーの約束

2013年作品
監督 ジョン・リー・ハンコック 出演 エマ・トンプソントム・ハンクス
(あらすじ)
ロンドン在住の童話作家P.L.トラヴァース(エマ・トンプソン)は、彼女の代表作「メリー・ポピンズ」を映画化したいというディズニー側からの申し出を20年近く断り続けてきた。しかし、最近の家計の悪化は極めて深刻であり、やむなく、映画化の最終決定権は彼女が留保しているという条件付きで交渉に応じることに合意。脚本の確認のためにロサンジェルスのディズニー本社を訪れるが….


ディズニー映画「メリー・ポピンズ(1964年)」の製作秘話を描いた作品。

このP.L.トラヴァースなる女性、なかなか他人に対して心を開こうとしない堅物であり、ディズニー的な開けっぴろげの脳天気さとは水と油の性格。その上、相当の皮肉屋でもあり、ディズニー側の用意した脚本の中身を辛辣な言葉でこっぴどくこき下ろす。

お気に入りの女優さんの一人であるエマ・トンプソンが演じているので、彼女らしい可愛らしさをいつになったら垣間見せてくれるのかと期待しながら見ていたのだが、意外にも、ストーリーがどこまで進んでも基本的に嫌味なオバサンのまんまであり、ラストを除いてほとんど弱味を見せるようなことはない。

この状態が126分の上映時間中ずっと続くとなると、相当見るのにしんどい作品になっていたのだろうが、まあ、そのあたりは製作側も十分配慮済み。このヒロインの決して幸せとは言えなかった少女時代の描写を織り交ぜながらストーリーを進めていくことにより、上手くバランスを取っている。

それに止まらず、彼女がディズニー側の脚本を承服できない本当の理由もこの少女時代の経験の中に隠されているといった“仕掛け”もなかなか巧妙であり、このへんをもっと強調していたら良質のミステリイ作品になっていたのかもしれない。実は、少女時代のヒロインの母親役を「刑事ジョン・ルーサー」でアリス役だった女優さんが演じていたので、彼女が飲んだくれの亭主をいつ血祭りに上げるのか、ヒヤヒヤしながら見ていたんだよね。

ということで、本作はあくまでもディズニー側から描かれた“製作秘話”であり、ラストの号泣シーンはヒロインのうれし涙として処理されている訳であるが、実際はどうだったんだろう。映画化されたものとは相当異なるらしい原作の方にも興味はあるが、確認する機会はなかなか無さそうです。