迷走の中倉山

今日は、妻と一緒に足尾の中倉山を歩いてきた。

木曜の晩、妻に週末の予定を尋ねたところ、日帰り温泉に入れるなら(先週に引き続き!)山歩きに付き合っても良いという望外のお返事。単独であれば、銅親水公園から大平山〜社山の周回を予定していたのだが、妻と一緒ということで急遽目的地の変更を検討したところ、松木渓谷を挟んだ反対側にある中倉山が面白そう。妻にはちょっと負担かもしれないが、先週、半月山周辺を歩いたばかりなので、まだ足腰は鈍っていないだろう。

さて、朝は出来るだけのんびりしたいという妻の意向を尊重した結果、銅親水公園を出発したのは午前7時16分のこと。立派な橋を渡り、“展望階段登り口”の標識のところからダムサイトに上っていくと、前方にショートカットに使う水道橋が見えてくる。途中、チェーンの掛かっている箇所があったため、ちょっとウロウロしてしまったが、結局、そこを強行突破し、水道橋を渡って対岸の林道(7時39分)に下り立つ。

ここから先は、まだ十分美しい紅葉を眺めながら林道をテクテク歩き、8時21分に上久保沢の堰堤の少し先にある登山口に到着。小さなケルンのところから右手の樹林帯に入って行くと、予想したよりもハッキリした山道がジグザクに続いており、それをたどって先の見えない急斜面を上っていく。

しばらくすると、深い枯葉に覆われて踏み跡の判別は困難になってくるものの、色とりどりのテープ類は最後までしっかり続いており、それを目印に進んで、9時38分にようやく尾根に出る。予想どおり、先週に比べて妻の足取りは軽いようで、まずは一安心。

尾根上の踏み跡も明確といって良いレベルなのだが、傾斜の方はなかなか緩やかにならず、10時丁度に着いた中倉山の“肩”のようなところで腰を下ろし、妻の踵の靴擦れの手当てを行う。なお、ここには“前山1393m”という真新しい山名板が掛かっており、このときは“随分マメな人もいるもんだ”と思っただけだったのだが・・・

さて、山頂まではあと一上りといったところだが、靴擦れの妻に少しでも楽をさせたいということで、途中、左手に見えたピンクテープを頼りにトラバース道へ入ってみる。最初の頃は理想的なショートカットのように思えたのだが、しばらく進むとそれが中倉山のピークを巻くようにして続いていることが判明。

慌てて右手の斜面を上って稜線に出ると、いきなりといった感じで松木渓谷を取り囲む山々の姿が目に飛び込んでくる。しかも、そこから目と鼻の先には中倉山の山頂を示す石積みが見えているため、喜びも2倍。10時45分、ようやく山頂(1539m)に着くことが出来た。

天気予報が的中した今日は快晴&無風という理想的なコンディションであり、北方には先週登った半月山や今日登るはずだった大平山、西方にはいずれは縦走したい沢入山、オロ山といった山々が青空を背景に綺麗に見えている。この絶景が“鉱毒のおかげ”というのは何とも皮肉なことだと思いながらのんびりカップヌードル等の昼食を取り、11時38分に再出発。

帰路はしっかり尾根伝いの正規ルートでと思い、途中、右手に続くピンクテープ群を無視して尾根上の踏み跡を進むが、これが大失敗。しかし、こちらにも少々古ぼけてはいるがテープが点々と続いているため、二人で協議した結果、もう少しそのまま進んでみることにするが、結局、尾根上の岩場に出たところでついに目印が見当たらなくなってしまう。

まあ、無理をすればこのまま尾根を下ることも不可能ではないだろうが、無理をしないのが俺の山歩きの鉄則ということをここでようやく思い出し、当初予定していたルートに復帰する旨を妻に宣告。GPSを頼りに最初は枯葉に覆われた斜面をトラバースしていくが、これではなかなか正規ルートに近づくことが出来ず、最後の手段ということで、何とか上れそうな枝尾根を見つけてそこから中倉山の肩の部分を目指して上り返す。

痛みは無いとはいえ、靴擦れを起こしている妻に予定外の上りをお願いするのは非常に心苦しかったが、ここで妻が驚異の粘りを発揮する。決してスピードは速くないものの、急な斜面を休まずに歩き続け12時54分に無事正規のルートに復帰。尾根上に出る10数mくらい手前からあの“前山1393m”の山名板が見えたときには、正直、とても嬉しかった。

ここから先は往路を引き返すだけであり、13時11分に尾根を外れてジグザグ道を下り、登山口(14時17分)の先からは林道をテクテク歩いて15時11分に駐車場着。その後、約束どおり日光の“やしおの湯”に寄って疲れを癒し、お気に入りの中華料理店で夕食を食べてから帰宅した。

ということで、総歩行距離は10.8kmと前回の半月山より短かったものの、山行時間8時間(休憩を含む。)というのは間違いなく妻の新記録。このスタミナとコースアウト時に見せたあの粘りがあれば、男体山くらい何でもないと思うのだが、まあ、本人にその気が無いのが最大の問題です。