風立ちぬ

今日は、妻と一緒に宮崎駿の最新作「風立ちぬ」の試写会に行ってきた。

何時のことだったか、映画の待ち時間のときに妻が暇つぶし半分に応募した試写会の募集が見事に当選。上映開始は午後6時30分からということで、仕事が終わってから妻と落ち合い、急いで映画館へと向かったが、館内の座席は到着順に決まっていく仕組みらしく、6時過ぎに会場に着いた我々は、前から3列目のほぼ中央という位置から本作を鑑賞することになった。

さて、内容は、ゼロ戦の設計者として知られる堀越二郎の半生を描いたものであり、実在の人物を描いているということでストーリーはいたって堅実。何度となく登場する夢のシーンはきちんと現実と区別されており、避暑地で謎のドイツ人と出会うあたりでちょっと雲行きが怪しくなるものの、結局、ストーリーは最後まで破綻することはなく、ラストの荒井由美の「ひこうき雲」まで無事にたどり着く。

ゼロ戦という相当厄介なシロモノを取り扱っているのだが、本作のテーマはあくまでも主人公の“個人的な”夢と純愛。震災や不景気といった現代にも通じるような社会描写はあるものの、それらとは一応無関係に、主人公の美しい飛行機を作りたいという夢がたまたまゼロ戦という形で結実しただけ、というのが本作の主張であり、まあ、多少の割り切れなさはあるにしろ、過度なゼロ戦賛美になっていなかったことは素直に評価したい。

また、前から3列目という至近距離からの鑑賞となったため、スクリーン一杯に広がる“絵”の素晴らしさを堪能することが出来たのが思わぬ拾い物。黒光りする木肌や、鈍い光を放つジュラルミンの質感表現など、すっかり主流となってしまったCGアニメでは表現できない、手書きアニメの執念(?)みたいなものをしっかり拝見させていただいた。

ということで、内容的には大人向けなのだろうが、主人公と新妻との気恥ずかしくなるような純愛ぶりを含め、子どもっぽさがあちらこちらに残っているあたりはいかにも宮崎作品らしい。ただし、庵野秀明を声優に起用したことによる違和感は、最後まで消えることはありませんでした。