2012年作品
監督 吉田大八 出演 神木隆之介、橋本愛
(あらすじ)
ある高校の金曜日の放課後。二年生でバレー部のキャプテンを務める桐島が突然退部したらしいとの情報が入り、彼から何も聞かされていなかった親友の菊池宏樹や恋人の梨沙たちの間に動揺が走る。翌週になっても桐島は学校に姿を見せず、菊池たちのイライラは募る一方だったが、そんな騒ぎをよそに、映画部の前田涼也(神木隆之介)らは新作映画の撮影に取り組んでいた….
昨年、国内の映画賞で軒並み高い評価を得ていた青春映画。
桐島君は、県選抜に選ばれるほどのバレー部のエースであり、同時に、校内一の美少女である梨沙と付き合っているというまことに羨ましいお立場。そんな、スポーツと恋愛という“青春”の2大要素を独占していた彼が、あっさりドロップアウトしてしまったことにより、彼の周辺にいた友人たちは激しく動揺する訳であるが、彼等の“裏切られた”という気持ちの中には、自分たちの“スポーツor恋愛至上主義”的な価値観を否定されたことによる怒りも当然含まれているのだろう。
一方、そんな価値観とは無縁な高校生も少なからず存在する訳であり、その象徴が監督、脚本&撮影を担当する前田君が率いる映画部の面々。終盤までは、もっぱらコメディリリーフとして使われているため、ちょっと可愛そうな気もしたが、驚愕のクライマックスシーンでは見事なまでの存在感を発揮しており、彼等と似た、あまりパッとしない高校生活を送った観客(=俺を含む。)の鬱憤をしっかり晴らしてくれる。
実をいうと、青春映画ということで、見る前は、俺のようなオヤジが鑑賞することについて若干の躊躇いが無かった訳ではないのだが、この作品を現役の高校生が見たらちょっと落ち込んでしまうかもしれず、結局、自分の高校生時代を客観的に振り返ることが出来る我々オヤジ世代こそが、この作品を一番楽しめるような気がした。
ということで、冒頭の、視点を変えて同じシーンを何度も繰り返すという方法は、脚本の下手なところを補うための苦肉の策かもしれないのだが、ここまで徹底して使われると、それ自体が立派なギャグとして成立してしまうのが面白い。いずれにしても、最近見た邦画の中では一番面白い作品でした。