ミュージカル ミス・サイゴン

今日は、妻&娘と一緒に帝国劇場で上演中の「ミス・サイゴン」を見てきた。

レ・ミゼラブル」同様、クロード=ミシェル・シェーンベルクとアラン・ブーブリルのコンビによる作品であり、できればウエスト・エンドのキャストが来日してくれることを期待していたのだが、そんな噂は一向に聞こえてこない。そんなときに目にしたのが、日本人キャストによる2年ぶりの公演のニュースであり、まあ、初体験には日本語版の方が取っつきやすいかもしれないということで、チケットを予約。

さて、開演時刻が午後2時からということで、東京駅の地下街にある「バビーズ ヤエチカ」というお店でニューヨーク風(?)のパンケーキやエッグベネディクトによる昼食を軽く済ませてから会場の帝国劇場へ。今日の座席は1階3列目のやや右寄りという好位置であり、これなら妻&娘も文句は無いだろうと思いながら待っていると、定刻どおりに舞台の幕が上がる。

ここでミュージカルを鑑賞するのは3年前の「レ・ミゼラブル」以来であるが、やはり舞台装置に対する力の入れようという点では群を抜いており、劇団四季やシアターオーブとはちょっと比較にならない。確かに、ストーリー展開のスピード維持のためにセットを単純化するというのが近年の風潮なんだろうが、本作におけるヘリコプター登場シーンの迫力は素晴らしく、正直、年甲斐も無く興奮してしまった。

一方、ストーリーは「蝶々夫人」をモチーフにしているとのことだが、我々の世代には、舞台に採用されたベトナム戦争末期のサイゴンのイメージが生々し過ぎて、主人公二人の“純愛”に素直にのめり込めない。また、「蝶々夫人」もそうなのかもしれないが、西洋人は理性的、アジア人は直情的っていう紋切り型の人物描写もちょっとどうかと思う。

とはいうものの、出演者の熱演はそんな俺のささやかな不満を補って余りあるものであり、特にエンジニア役の市村正親の存在感は大したもの。ポジション的には主役というより狂言回し的な存在なのだが、彼が舞台にいるとどうしてもその姿を追ってしまうんだよね。また、キム役を務めたキム・スハの美声は今でも耳に残っており、彼女が第1幕の最後に歌った“I'd Give My Life for You”が本日のベスト歌唱だと思う。

ということで、依然としてウエスト・エンド・キャストの来日予定は無いものの、2014年にロンドンで開催された25周年記念公演が映画化され、来年公開される予定とのこと。シェーンベルクのシンプルで美しいメロディ・ラインは聴けば聴くほど味が出てくるので、スクリーンはもちろん、CDやDVDでもじっくりと楽しませて頂こうと思います。