レ・ミゼラブル 25周年記念コンサート

2010年作品
製作 キャメロン・マッキントッシュ 出演 アルフィー・ボー、レア・サロンガ


初演25周年を記念してロンドンのO2アリーナで開催されたコンサートの記録。

映画版「レ・ミゼラブル(2012年)」を見たときの感動の余韻は当分覚めそうになく、ミュージカルの舞台を記録したDVDがないか探してみたのだが、その結果見つかったのがこの作品。残念ながらミュージカルそのものではないのだが、各出演者が舞台の衣装を身に付けて順番に歌を披露してくれるので、ミュージカルの雰囲気は十分に伝わってくる。生のフル・オーケストラによる演奏も迫力十分。

マリウスからの手紙をジャン・バルジャンに届けるのがエポニーヌだったり、映画版と異なる部分もいくつか見られるのだが、一番興味深かったのは、前半のトリを務めるのがジャベールの“Stars”ではなく、主要登場人物たちの掛け合いによる“One Day More”であるところ。実際の舞台も本作と同じらしいのだが、映画版で敢えて構成を変更しているのは、この曲を「ウエスト・サイド物語(1961年)」の“Tonight(Quintet)”と同じように使いたかったトム・フーパーの工夫だったのだろう。

出演者は、いずれもオペラまたはミュージカルの経験者ということで、歌の上手さという点では本作の方が映画版を相当上回っている。特に目を引いたのは、ジャベール役のノーム・ルイスとアンジョルラス役のラミン・カリムルーであり、前者は黒人の方なのだが、その毅然とした態度と圧倒的な歌唱力のおかげで違和感は全くない。

勿論、ジャン・バルジャン役のアルフィー・ボーやファンテーヌ役のレア・サロンガも素晴らしいのだが、正直、見た目でいうと、やはり映画版はヒュー・ジャックマンアン・ハサウェイで正解だったのだろう。なお、映画ではあまり目立たなかったジャン・バルジャンの歌う“Bring Him Home”が、このコンサートではとても大きく扱われていることがちょっと意外だった。

ということで、主要登場人物の中で唯一人、両方の作品に出演しているエポニーヌ役のサマンサ・バークスは、映画のときより美人に写っており、ジャン・バルジャンの臨終のシーンでも歌声を披露するなど出番も多くなっている。また、テェナルディエ夫妻役のマット・ルーカスとジェニー・ギャロウェイのコンビが大人気だったのもとても面白く、全体として映画版に負けず劣らずの素晴らしい作品でした。