おおかみこどもの雨と雪

今日は、家族で「おおかみこどもの雨と雪」を見に行ってきた。

TVのCMを見た限りでは、内容は家族ドラマのようであり、娘が興味を示してくれるかちょっと心配だったのだが、そこは「時をかける少女(2006年)」、「サマーウォーズ(2009年)」とヒット作を連発している細田守監督の最新作ということで、あっさりOK。そういえば、先週まで帰省していた長男も、封切日に見に行ったと話していた。

さて、内容は、予想したとおりの家族ドラマであり、狼男は登場するものの、派手なアクションシーンなんかは全く出てこない。二人の子ども(=おおかみこども)を持つシングルマザーになった花の半生を娘の雪が物語るといった形でストーリーは展開していくのだが、メインのテーマになるのは“子どもの自立”という至極真面目なもの。

まあ、子ども目線だからという訳ではないと思うが、経済的な面も含め、花の子育てや田舎暮らしでの苦労については控え目に描かれており、正直、かなりリアリティに欠けるのだが、それらをあまり深刻に捉えたくないという細田監督の狙いはきちんと成功しており、見終わった後に残る清涼感みたいなものはそんな配慮の賜物なのだろう。

このバランス感覚の良さというのは、「サマーウォーズ」を見たときにも強く感じられたものであり、この監督の頭の良さを印象付けるものであるが、雨と雪の役割分担や草平の母の再婚の取扱いなどにみられる保守的な男女感も含め、それらが彼の本音だとはやはりどうしても信じられない。まあ、浮き沈みの激しいアニメ業界ということで、失敗を恐れなければならない事情は十分理解できるところであるが、次の次の作品辺りでは是非とも彼の本音を見せて欲しいと思う。

ということで、子どもの自立の裏側にある“母親への罪悪感”という難しい問題を口当たり良く料理した細田監督の腕前は大したものであり、我が家の子どもをはじめ、今の若者たちに高く評価されるのも十分肯けるところ。ただ、俺のような老人には、あの若さで長い老後を過ごさなければならない花の“その後”のことが気になって仕方ありませんでした。